生配信17 鬼電

「じゃあ、また近いうちに。おつかれ」


「「「おつかれ~」」」


 ピロン。


「ふぅんんんん!」


 長時間椅子に座っていたからか、身体を伸ばすとポキポキっと骨が鳴る。


 そりゃあ、骨も鳴るわ。今日1日ずっと椅子に座ってたもの。鳴らないはずがないよな。


 椅子の背もたれに、どっしりともたれかかり、タバコを吸う。


「ふぅ」


 タバコを吸いながら、今日のこの後のことを考える。


 まずは、風呂と夜ご飯だ。


 昼配信が終わったのが16時で、それから30分休憩を取り、耐久配信を3時間で成功させた。


 それから、少しの間絵茶さんとゼロスさん、ワンスさんとおしゃべりをして、現在の時刻は20時46分。


 これから夜ご飯を作るのは少し億劫なので、今日も宅配に頼ることにする。


 タバコを吸いながら、今日何を食べるのか、ネットで調べながら決めていると、


「ピザ、か」


 ピザ屋さんのメニューに目が行く。


「最近、ピザ食べてないな。どんな種類のピザがあるんだろう」


 メニューに目を通していると、いつの間にか身体は、ピザを欲するようになっている。


「………ピザ。ピザが良いな。うん、今日はピザにしよう」


 今日の夜ご飯はピザに決まり、食べるピザも決まった。スマホからピザを注文し、あとは来るのを待ちだけ。


 待っている間は、お風呂にでも入ることにする。


 ………


 ……


 …


「おお! 良い匂い!」


 今、目の前にはMサイズのピザが2枚置かれている。


 お風呂から上がり、髪を乾かし終わった直後、良いタイミングでピザが届いたのだ。


「いただきます」


 俺は、焼けたチーズとトマトソースの香りに我慢ができず、1切れ目に手を伸ばす。


「うぅぅぅぅ! #うふぁい__うまい__#!」


 久々のピザは想像よりも遥かに美味く、ものに20分程度で2枚をペロリと食べてしまう。


「うううう! お腹が一杯で苦しい」


 流石に2枚はキツかった。キツかったが満足している。


 今日は夜配信の予定がないため、あとは寝るのみとなっている。


 このまま食休をしてから寝るのもアリなのだが、それでは時間が勿体無いような気がしてならない。


 まだ、22時にもqなっていない。


 やることもないのだが、もう少し何かをしたい。


 ゲーム? 


「暇つぶしでやるくらいなら配信する」


 人の配信見る?


「有りちゃあ有り。でも、気分じゃないんだよな」


 自分が何をしたいのか、自分でも分からない。


 こういう暇なときは、いつも聡太さんに電話かけて暇を潰すのだが、今日は聡太さんが旅行に出かけているので無理。


 さて、どうしたものだろうか。


 ………………。


 いいや、電話しよ。


 思いだったたら吉日という言葉があるように、俺は行動に移す。


 1コール目。


「………」


 気づいてないのだろうか?

 

 2コール目。


「………」


 まだ出てこない。


 3コール目。


「………あれ?」


 もしかして、気づいてらっしゃらない?


 その後、何度も何度もコール音がするものの、出てくる気配がない。


 俺はここで1度電話を切り、再度聡太さんに電話をかける。


「………………………これもか」


 また電話に出てくれない。


「アゲイン!」


 再度挑戦。


「……………………………チッ!」


 2度目も3度目も聡太さんは出てくれない。


 メンヘラ彼氏ぽいことをしている自覚はあるのだが、諦めるわけにはいかない。今日の配信で、諦めなかったら成功できると知ったから。


「……………………この!」


「………………………まだ出ない気か!」


「ふんふん、ふん、ふん、ふん、フンッ!」


「あきらめないよー! がんばるよ………チッ!」


 この後も、もう5回ぐらい続け、聡太さんが出てくるのを待つ。


 13回目か14回目か、数が分からなくなってきたな。


 13回目か14回目か分からないが、まずは電話をかける。


「………………………チッ」


 またダメかと思い、耳からスマホを離そうとした瞬間、スマホ越しから物音が聞こえる。


「ッ!」


 スマホの画面を見ると、通話中の3文字と、通話時間が表示されていた。


 よしゃあ! 


 嬉しさのあまり、ガッツポーズをしてしまった。


 さて、電話をしといて、一言も発さないのは失礼なので、何か喋ろう。別に喋りたいことなんて無いのだけど、適当な話でもしようかな。


 何を話そうか? 今日に配信? 焼肉について? 沖縄についても話さなきゃな。


 うんんん、まずは焼肉からか。


 優先順位を焼肉に話にし、焼肉の話をしようとすると、その前に聡太さんが言葉を発する。


「死ね。何度もかけんな。迷惑だ。馬鹿、阿保」


 罵詈雑言を。


 聡太さんが言葉のナイフを俺に投げつけ、そして、


「プツン、ツー、ツー、ツー」


 言い逃げ、もとい投げ逃げしていった。


「まあ、確かにそうなるわな」


 聡太さんの暴言に目が覚めた俺は、LINEで「すみません。ふざけてました」と謝罪を入れ、早い就寝に着くのであった。


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