生配信9 こっそりエーペックス
夜配信が終わり、タバコを1本吸っているとスマホが鳴り、メッセージが1件表示される。
誰だろう、こんな時間に。
スマホの画面を見ると、
『エーペックスやろ』
聡太さんからエーペックスの誘いだった。
今日、一緒にやったじゃん。あの人、何時間ゲームする気なの?
「何時間ゲームする気ですか? 俺寝たいんですけど、と」
返信をし、聡太さんが配信をしているのか確認する。
配信はしてないみたいだな、聡太さん。
ふと、聡太さんがどんな動画を上げているのか気になったため、動画一覧を眺める。
エーペックスにUNO、バイオハザードにFF14か。そういえば、最近FF14やってないな。
………明日やろうかな。
スマホで聡太さんのFF14配信を見ていると、返事が返ってくる。
『今日はそんなにゲームしてない、6時間くらい。やろ、ランクマ』
6時間があまりやってないに入るのか。まあ、ゲーム配信者ならそうなるのか。
「ランクマですか? いいですけど、俺低いですよ」
今日始めたばかりで、さっきブロンズ3に上がったばかりだ。
聡太さんの手助けをできるとは思えない。それでも聡太さんは、
『いいぞ。やろう』
良いらしく、仕方がないので付き合うことにする。
「2時間だけですよ。それ以降はやりません。寝ます」
『オーケイ。やろう』
2時間だけのエーペックス。先程、配信と共に消したエーペックスを再び開く。
「電話できます?」
エーペックスのロビーで待っていると、聡太さんがチームに参加し、PCの通話アプリに通知が来る。
もちろん、聡太さんからだ。
「もしもし」
「もしもし。寝ようとしてるところ悪いな」
「いえいえ、別に、んんん」
欠伸を噛み殺し、会話を続ける。
「急にどうしたんですか? 遅い時間にエーペックスやりたいって?」
聡太さんのやりたい理由を聞く。しょうもない理由であったら止める気で。
「いや、その、だな」
いつもの聡太さんなら「やりたかったから」とか言うのに、今はかなり言葉が詰まっている様子。
何かあったのだろうか?
「ちょっとね、エーペックスの上手い人の動画を見てたらやりたくなって」
「ああ」
分かるわ、その気持ち。上手い人のプレイ見ると無性に同じゲームがやりたくなる。
それなら付き合うしかないわ。
「じゃあ、ランクマやりませんか? ちょっとランク上げたいんで」
「おう、いいぞ!」
ランクを上げたい理由はサキサキさんに自慢するため。今日始めたばかりのやつに、ランク超されていると知ったらどう思うのだろうか?
………めっちゃ悔しがるんだろうな。
ドヤ顔で伝えてやろう。
そう思い、ランクマのマッチングが終わる。
そういえば聡太さんのランクってどれくらいなんだろう。
俺がブロンズ3だから、聡太さんはブロンズの1個上のシルバーとかかな?
勝手な予想に何故か自信がある俺は、聡太さんとマッチングした野良、チャンピオン部隊のランクを見て驚く。
「ゴールド?」
聡太さんのランクはゴールド1で野良の仲間はゴールド2。
ゴールドってブロンズの何個上? ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤ、マスター、プレデターだっけ? 2個上なんだ、聡太さん。………これって俺だけ場違いじゃない?
気付くのには遅すぎた。というか、
「ええ、聡太さん、ゴールドなの?」
「おう。言ってなかったっけ?」
言ってねぇよぉおおおお! 知ってたらランクマなんてやろうとか言わねぇよ!
確か、ランクマってランクが上がれば上がるほど、参戦するのにポイント使うんじゃなかったっけ?
ブロンズはノーリスクで参戦できて、シルバーなら12ポイント使う。シルバー以上のランクは12ずつ上がっていき、ゴールドは24ポイント使うんじゃなかったっけ?
「聡太さん、ポイント何からスタートですか?」
「マイナス24」
ほら、24ポイント使ってのスタートだからマイナススタートだよ。
ランクマは1キルすると10ポイント入るから、3キルすればお釣りが来る。
ちなみにブロンズの俺は0スタート。
聡太さんの足を引っ張ることだけは避けたいから、聡太さんにキルを献上しよう。
俺はそう思い、行動基準を立てる。
野良の人には申し訳ないが、身内が大事なので、聡太さんを優先する。
戦場に降り立った俺たちは、まずは武器を探すのだが、
「聡太さん、紫のアーマーありました」
目の前に体力ゲージを100増やしてくれるアーマーがあった。
「お、いいじゃん。着れば?」
「いや、聡太さんが着てください。俺は白アーマーで十分なので」
野良の人に取られないように、死守する。
やがて来た聡太さんに紫アーマーを渡し、武器を探しに行く。
5点バーストのプラウラーにプラウラーの弾。どこかにないかな。
野良の人が漁った場所を探しても、所詮漁った場所。武器などほとんどない。
「聡太さん、なんか武器ないですか? プラウラーとかプラウラーとかプラウラーとか」
アーマーを渡したのだから、プラウラーを見つけてくれていたら俺に譲ってくれるだろ。
プラウラー欲しいアピールをしていると、
「滝、こっちにいいものあるぞ」
聡太さんが何かをくれようとしていた。
プラウラーか!
ダッシュで聡太さんの元に向かう。そして聡太さんの足元に落ちていた武器を見るとプラウラーではなく、スナイパーライフルが落ちていた。弾も一緒に。
「またこれを使えと?」
「そう」
武器を1つも持っていない状況なので贅沢は言えない。
スナイパーライフルのトリプルテイクと弾を拾い、次の物資のありそうな場所に向かう。
「スコープが欲しいです。あったら教えてください」
「何倍のスコープが欲しい?」
スコープには倍率があり、倍率が高ければ高いほど遠くにいる敵が見やすくなる。
「4ぐらいのスコープが欲しいです」
そこまで倍率が高くないが、俺はこれ位じゃないと敵に当たらないのだ。
「オーケイ、探しとく」
聡太さんと野良と一緒に行動し、4倍スコープとプラウラーを見つけ、いろんなところを漁って行くが、一向に敵の気配がしない。
残り10部隊となり、やっと敵を見つけた。
「ここは慎重に近づいて、倒せるなら倒す。無理なら引く、がいいですね」
「俺もそれがいいと思う」
俺はスナイパーのスコープで覗きながら、周りに他の部隊がいないか、敵が何人か探す。
聡太さんはいつでも撃てるように、照準を合わせ、俺の合図を待っていた。が、野良の人は俺たちがそんなことしているとは知らない。なので、
パパパパンパパパパン!
敵に向け発砲して行く。
銃弾は距離もあったせいか、敵に届くことはなく、ただただ位置がバレただけ。
「「あ~あ、バレちゃった」」
バレたのなら仕方がない。
俺も野良が狙っている敵をスナイピングして行く。
「敵、紫のアーマーなんですけど」
「喧嘩売っちゃいけない奴らに売っちゃったな」
確かにアーマーが弱い状態で強いアーマーに勝つには、精密な射撃か奇襲だけだろう。
しかし、相手のアーマーが強いのを知らない野良の人は1人突っ込んでいく。
「あ、待って野良の人! それは良くないよ!」
「行くな、野良!」
突っ込んでいった野良は、すぐに溶かされ、死んでしまう。
「はああ、仕方ない。助けに行くか」
聡太さんは助ける気があるようだが、俺にはない。
「これ行ったら死にますよ。逃げましょうよ」
「死んだら死んだだ。行くぞ」
俺と聡太さんは野良の人を助けるために突っ込んでいく。
もちろん、勝てるわけなく。
「横に敵がいます。あああああああ、死んだ!」
「ごめん、俺も死ぬわ」
俺と聡太さんも死に、部隊が壊滅。
ランクポイントは俺が0で、聡太さんがマイナス24。
ロビーに戻り、
「カジュアル行きますか」
「そうだな」
ランクマを諦め、カジュアルマッチをやることにする。
それから2時間程度カジュアルマッチを行き、最後の試合でチャンピオンになり、きりが良かったので、終わりにした。
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