第13話 占い師は見えてる
ある日の休日、わたし
占い師「いらっしゃい」
未咲「(わ、いかにもって感じ……)」
室内の装飾だとか、占い師さんの恰好だとか。
齢はまだそこまでいってなさそうだけど、雰囲気は見た目以上に高齢だ。
占い師「座りなさい」
未咲「あ、はい……」
ちょっと近寄りがたい雰囲気もある。
声をかけられて、わたしはようやく椅子に腰かけることができた。
占い師「氏名と生年月日を教えて」
未咲「えっと……入野未咲、です。生年月日は……」
占い師「ちょっと待って」
未咲「?」
占い師が、水晶のようなものを見つめながら首をかしげていた。
占い師「ねぇあなた、いまなにかたいへんなことになってない?」
未咲「えっ? いえ、特にそんなことは……」
占い師「あ、そう……おかしいなぁ……だとするとこれはなんだ……?」
かなり困惑している様子の占い師さん。
占い師「黄色っぽいものに、少しだけ桃色のようなものも見えるのよ。
どこか水っぽさを感じるし、ちょっとよくわからないわね……」
占い師さんがそう話している間、わたしの体温が若干上がった気がした。
占い師「……まぁいいわ、さっそく見ていきましょ……入野さん?」
未咲「!」
椅子の所から、しょわしょわと何かが出ていくのを感じた。
未咲「(なんで?! おしっこなんて、さっきまで全然したくなかったのに!)」
突然のことだった。
そりゃ、玲香ちゃんのこととか少しくらいは考えたりしたけど!
占い師「わかったわ。あなた、さっき別のこと考えてたでしょ」
未咲「?!」
当てられてしまった。となると、少しちびっちゃったことも……?!
占い師「そしてこのオーラ、間違いない……失禁、しちゃったのかしら?」
未咲「しっ、してないですっ!」
言った隙から、しゅい~っ♡と下着を大きく濡らすくらいの量があふれてくる。
占い師「いいえ、わたしには見えてるわ。隠さず本当のことを言って」
未咲「す、すみません、急に我慢できなくなっちゃって……」
占い師「いいのよ、漏らす前にトイレを勧めなかったわたしも悪かったから……
もう間に合わないでしょうし、ここで存分に漏らしていきなさい……」
未咲「じ、じゃぁ、お言葉に甘えて……」
顔を赤らめながら、子どものようにみっともなく下着をつけたまま排泄した。
つい、おしっこの音が大きくなっちゃったりして、とっても恥ずかしかった。
占い師「気持ちよさそうね……昔を思い出すようで、なんだか懐かしいわ」
未咲「と、言いますと……?」
占い師「多忙だったころ、トイレに行く暇がなくて、なさけなくここで……」
やっちゃったらしい。いまでもその染みはしっかり床に染みついているという。
占い師「ほんとうに青かったと思う。もちろん、いまはそんなことないわよ?」
言いつつも、頬がほんのり紅色になっているのはなぜなんだろう。
占い師「そんなことはいいのよ……占いの結果、知りたくないの?」
未咲「そりゃ、気になりますけど……」
占い師「きっと、そのために来たんだものね。
いいわ、教えてあげる。さっきのような災難にだけは気をつけなさい」
未咲「えっ、それだけ?」
占い師「ええ。見たところ、あなたには特に禍々しいものは見えなかったわ」
未咲「本当のことを言ってるんですよね……?」
占い師「……わたしが嘘を言っているとでも?」
なぜかにらみ合いに。これってどうなの……。
未咲「あっちなみに、恋愛運とかは?」
占い師「想い人はいるんでしょうけれど、それは叶わないわ」
未咲「そう、ですか……」
シンプルにそう言われて、わたしはどこか納得していた。
そうだよね、玲香ちゃんのことはこれまでもこれからもたんなる幼馴染。
わかりきっていることだった。
占い師「あとはわたしが片付けておくから、きょうはもう帰りなさい」
未咲「ありがとう、ございました……」
声のトーンが、どこか一段階低くなっている気がした。
さながらこの冬の世界のように。
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