第11話 作曲をしたんだよ

 ある日のこと。


 未咲「ねぇねぇ玲香ちゃん、見てみて! ギター買ったの!」

 玲香「……うそでしょ、あんた?!」


 しばらく沈黙し、そして目を見開く玲香ちゃん。

 突然のことにあっけにとられているみたい。


 未咲「作曲もしたんだよ! どうかな、どうかな?!」

 玲香「どうって言われても……(まぁ、とりあえずは見るけど……)」


 買ってそうそう作曲って、だいぶチャレンジャーな気がする。

 紙にはこう書かれている。


 ―――――――――――――――――――――――


 きゅーっと x2 空にえがくわたし☆

 ソ#   ミ   ラソ#ファ#ソ#ファ#ミミ


 なにかいいことが 起こりそーなよかんが

 シミミファ#ファ#ソ#ソ#ラ シ    ド#シラ


 ずーっと x2 つづいてくこんな日☆

 (最初と同じ)


 あー あしたもいいこと ありますように!

    (ここまで同じ) シド#シド#シレ#ミ


 ―――――――――――――――――――――――


 玲香「……未咲、これほんとに自分で考えたのよね?」

 未咲「えー、玲香ちゃん疑り深い~! ちゃんとわたしが考えたのに!」


 ふだんおちゃらけている印象しかない未咲が、こんな丁寧なことを……。

 人は見かけによらないもの。若干痛い感じだけど、いうほど悪くはない。

 ワンフレーズ作るのでもけっこう大変だったりする。よく頑張ったわね。


 玲香「コードは……そうね、E C#m A B か E A F#m B、最後に E がいいかしら」

 未咲「おー、見ただけで玲香ちゃん、そこまでわかっちゃうんだね~」

 玲香「まぁ、これくらいならぱっとわかるわ。難しいメロディだと大変だけど」

 未咲「またメロディ考えついたら、これで弾けるようにコード? 教えてね」

 玲香「いやよ、今回限りなんだから」

 未咲「つめたいこと言わないでよ~、れいかちゃ~ん!」


 つんとしたところがまた玲香ちゃんっぽいと、わたしはこのときそう思った。

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