48 魔術師殺しロイ=フランター

ロイが指に挟んでいる超小型の杖はそれぞれ異なる属性の魔法をアシストするものであり、ロイは闇魔法を中心に俺らの周りを高速で移動しつつ爆裂魔法、火属性魔法、氷魔法、雷魔法で攻撃をしてくる。さすがに一本の腕じゃ対応できないので、翼を引っ込めて腕を四本に増やす。イミナがとらえきれなかった分も俺がアシストに入って魔法を防ぐ。俺の防御力は高く、多少の衝撃は来るものの魔法を防ぐことができる。しかし、そのあまりの魔法の繰り出す速さに俺は対応が遅れてしまい、イミナに魔法が少し当たってしまう。

「イミナ大丈夫か!」

「は、はい!で、でもこの攻撃、すさまじいです!」

このロイのすごいところは、六本目の杖で自分自身を回復しているのだ。攻撃力、防御力、リーチなら負けなしの俺らだが、ロイは素早い動きで間合いを詰めてくるいやらしい戦い方で最も苦手なタイプだ。

ただ、リヴァイアサンの眷族となったイミナは少し成長していた。

「ふぅ、そろそろ攻守交代です。『転翔』!」

「あいよぉ!」

足に集中して高速で移動する。回復魔法を使い一休みする隙を狙って高速で移動し、間合いを詰めて攻撃しようとする。ロイもこれには驚いた表情を見せたが、冷静に闇魔法で移動し攻撃をよける。

「ふっ!」

ある程度イミナはロイの癖が読めてきて、ロイが移動する場所をなんとなく読めてきたようでその場所向かって拳を振る。

「…え!?」

イミナの予測通りロイが瞬間移動してくる。目の前まで迫った拳を間一髪でロイは体を反らして回避する。

「うおっ!!あぶなっ!」

「ロイさん、終わりです。」

イミナはかがみ、すかさず蹴りを加える。不安定な姿勢で攻撃を回避したため、次のイミナの蹴りを回避できないように見えたが、足をすくわれたロイは地面に倒れる形でそのまま闇魔法を発動し、空間転移した。

「い、いてぇ…。イミナちゃん容赦ないね。」

ロイは空高くにふわふわと浮いていた。

「さすがに…ここまで来たら攻撃当たらないでしょ?」

空中高くに飛び上がったロイは遠距離魔法を連射してくる。

「空中戦なら私もできます!リミドさん『翼:浮遊』!」

「おう!」

四本の腕を引っ込め、イミナの背中から翼を生やして空高く飛び上がる。

「うそ飛べちゃうの!」

ロイはそれはまぁ驚いた様子だった。しかし、こちらも油断できない。何か奥義的なものを隠している気がする。この魔力量のロイが、初見殺しの近接攻撃で終わるとは思えない。飛んでくる魔法をイミナは防ぎながらロイへと近づく。




「あの年で浮遊魔法が使えるのか、大した技術だのう。」

リヴァイアサンは感心していた。

「あれは彼女の独特の魔力属性のせいです。彼女の魔力は七変化、どの魔法にも属さずどの魔法にも属すことができる特殊な体質。そのせいか体に魔力を込めやすく、ああやって体中に魔力を込めることで体をいとも簡単に浮かせるのです。」

生徒の1人が解説する。

「いやもちろん見たらわかるわい。ただ…人間の魔力量の限界に近いほどだ。やつは本当にすごいの。」

リヴァイアサンが人間を褒めるときは、たいてい嘲笑うときや愛でるときである。

しかし、これは純粋なる賞賛であった。浮遊の魔法は体中に魔力を巡らせなければならず、魔力回路の形からして人間は浮遊魔法を扱うのがとても難しい。いわば生物の性質みたいなもので、龍や鳥、悪魔などはもとより魔力回路が浮遊の魔法に適合するようにできているためたやすく空を飛ぶことができる。つまり、人間は浮遊の魔法に適した魔力回路ではないということ。それをロイは、その圧倒的な魔力量、そして体質、そしてたぐいまれなる魔法の才能と努力の結果として成し遂げているのだ。



「ぎゃあ、飛べるなんて聞いてない!いや悪魔だから飛べるのか!」

まぁ本当は悪魔じゃないんだけどね。

俺らは追う。しかしロイは闇魔法を使って逃げる。

よくもそこまで魔力がもつな…。

「常人ならとっくに魔力切れを起こしているレベルです。それに加えて浮遊魔法なんて…本当に化け物です。」

イミナがこういうぐらいである。さすがはオクタグラムの主席といったところか。さっき吹き飛ばした次席も本当はこれぐらい強いのだろうか。だとすると相当かわいそうなことをしたと思う。

「…!いない!」

イミナがロイを見失う。

「上が、がら空き!」

声のする方をイミナは向く。イミナは頭上を見上げるが、先ほどまで声のした方を向くもそこには何もいなかった。しかし、イミナは強大な魔力を感知しすかさず自分の下の方を向いた。そこには魔力をためているロイがいた。

「いくよイミナちゃん!」



『制裁の光(ジャッジメント)!!!!!』



強大な光が俺らを包む。すさまじい衝撃が俺らを襲うが、とっさに防御できたおかげでイミナ自身にダメージは無いようだった。どうやらイミナも魔力を放出してその魔法に対抗しているようだった。魔法は使えないが魔力中和はできるらしいぞ。

ロイの攻撃が終わる。

「は…はは…まじか、かたい…ずるいなイミナちゃん…。」

どうやら魔力切れを起こしたようで、ロイは落下してしまう。

「ロイさん!」

イミナは急降下し、ロイを手で抱えて落下するのを防ぐ。

「あ、あはは…ありがとイミナちゃん。」

「はい。お疲れ様です、私の勝ちですね。」

にこっとイミナはほほ笑む。

「くぅー!オクタグラム主席のメンツが丸つぶれだ!はは…。」

そういうと疲れたのかロイは眠ってしまった。

「ふぅ、勝てましたが…なかなかの強敵でした。」

さすがに悪魔帝の脅威、そして剣聖の強さを体に染み渡らせているイミナの戦闘能力の成長はすさまじいものだ。しかし、そのイミナをここまで追い詰めたロイは天才といえるだろう。





作者よりコメント:ロイお疲れ。戦闘シーンはあんまり書きなれていないんで ? みたいになってしまう点があるかもしれませんが申し訳ありません。

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