12 久々のベッド

「あぁ、もう無理。疲れた。」

「あはは、リミドさん途中から諦めてぐったりしてたよね。」

素材の換金が終わり、俺らは冒険者ギルドを出て近くの宿屋に向かっていた。

相場はよくわからないが、この一日でまぁまぁ稼いだようで10日分の宿代ほどにあたるそうだ。

しかし、俺らはギルドの受付のお姉さんに怒られてしまったのだ。

「ソロでの迷宮攻略はとても危険です!悪魔を従えているといっても油断してはいけません、新人は通常迷宮などではなく冒険者ギルドに届く依頼をこなして資金をあつめ、装備や仲間をそろえてランクをDにあげてから迷宮に向かうのが新人の流れです。迷宮に向かった新人は10階層主で諦めて戻ってきて自分の実力を思い知らされて下積みからきちんとやるのですが、中途半端に実力があるとどんどんどんどんと階層を潜ってしまいそのまま帰ってこなくなった新人をこれまで何人も見てきました。ですから、少なくともDランクになるまではもう迷宮に行かないでください!」

こんなことを言われた。20階層までいけたのだからいいじゃないか、そうも思ったが、受付の人が言うことにも一理ある。いきなり迷宮に行くのはリスクがありすぎたようだ。迷宮とはゲームで言うやりこみ要素だ。もっと下積みを経験してからでもよかったな。

これからはしばらくEランクのクエストをこなしつつ迷宮の情報を集めて攻略に向かおう。

ちなみにだが冒険者のランクはこのようになっている


Sランク:一国に1人程度の化け物 一軍隊に相当する戦闘能力 Lv200相当

Aランク:冒険者のプロの中でもトップ Lv100程度

Bランク:冒険者のプロ Lv80程度

Cランク:手練れの冒険者 Lv50程度

Dランク: アマチュア冒険者 Lv30程度

Eランク: 新人冒険者 Lv15程度


今はレベル的に言えばBランクに相当するのだが、まだ冒険者としての知識も経験もない。

もっと経験を積んで、一流の冒険者になるのが今のところの目標だ。

「ついたよリミドさん。」

黒猫亭、そう看板に書いてあった。

「いらっしゃい!おぉ小さいお嬢ちゃんじゃないか。どうした?教会の場所がわからないのか?」

ここの宿主だろうか、黒色の毛をした獣人である。

「あ、えっと冒険者です。はい。」

イミナはつまさきをたてて冒険者プレートを渡した。

「あぁこりゃ失礼した、一泊3銀貨だ。何泊止まる?」

「10日お願いします。」

うんしょ、うんしょといいながらイミナはポケットから出すと見せかけて俺のスキル、収納から3枚金貨を出して宿主に渡した。100銅貨で1銀貨、10銀貨で1金貨、100金貨で1白金貨である。そこらの相場をみたところ、1銅貨は日本円で約10円、つまりここは一泊約3000円だ。ア〇ホテルぐらいの値段だな。

「はいよ。部屋は二階だ、一回には酒場と浴槽がある。食堂は金がかかるが、浴槽は宿泊者は自由に使っていい。これが部屋のカギだ。」

隣のドアの向こうでは、大勢の人が騒いでいる。夜の酒場だ、冒険者でにぎわっているのだろうか。

俺らは二階にあがり、部屋に入る。

質素な部屋だが、清潔感があっていい部屋だ。

「わぁベッドだぁー!」

「ストップ!」

俺が服を硬直させてイミナの動きをとめる。

「迷宮にいったし汚いだろう、まずは風呂だ。」

「…。はーい。」



冒険者はまだ酒を飲んでいる時間だ、浴槽には誰もいなかった。

イミナは心臓部分に張り付いた禍々しい黒いもの、もとい俺をほかの人に見られないように白いタオルを巻いている。この世界では布の技術が発展しているのか、このタオルもとても触り心地が良かった。

「ふああぁーきもちいー。」

お湯につかり血圧が上がったからか、俺の頭がすこしくらくらしてきた。

心臓とはめんどくさいな。

しかし、他に誰もいなくてよかった。イミナの心臓部分を見られる心配がないというのもあるが、いちばんは俺だ。イミナの心臓、つまり俺も性別的な女だ。いつもイミナの服でいるわけだからイミナの体にはもう慣れたのだ。だからと言って、他のにはなれない。どうにも心拍が上がってしまうのだ。

「今リミドさん、変なこと考えてた?心臓どくどくしてるんだけど。」

「え、そんなことないよぉ。きっとお湯があったかいからだよ。はは。」

「…。私、リミドさんのおかげですごく強くなれた。まだ、全然冒険者としては未熟だけど、レベルはもうBランク相当だし。レベル4だったころには想像もできなかった。本当に、ありがとう。明日からは、下積み頑張ろうね。」

「あぁ、そうだな。」

この世界に転生して、イミナの心臓を器として転生して本当に良かった。

そんな風に、のほほんとしていいると、浴槽のドアがガラガラと勢いよく開いた。

「おぉ、だれもいねぇな貸し切り状態…って朝の嬢ちゃんじゃねぇか!」

そこにいたのは朝であったCランク冒険者のパネラだった。

さらに、後ろから数人の女冒険者も入ってきたのだ。

「あれ!イミナちゃんじゃない!一緒の宿だったのね!」

「悪魔さんも一緒なのね!よろしくー!」

あ、ちょ。裸の女性がたくさん。あ、これやばい。

「ちょ、リミドさん。すごい血圧あがってるけど、あ。」

俺のせいでイミナも気絶。

俺らはそのまま部屋のベッドへと連れていかれた。


イミナの服は下着から何まですべて俺だったため、パネラたちはタオルを巻かせて寝かせたのだが、朝起きて半裸の状態で寝ていたイミナは俺をはたき起こしてすぐに服の形にさせた。

すごい、怒られた。

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