10 巨大遺跡迷宮アスモデウス2

その迷宮は前触れもなく地中からその姿を現した。何もない平原に突如として現れたその迷宮の名はアスモデウス。迷宮の入口にその名が記されていたことからそう呼ばれるようになったのだ。その迷宮に入った冒険者は金銀財宝を持ち帰ってきたという。しかし冒険とは危険がつきものだ。宝を守るように魔物がはびこり、罠が現れた。その平原には人がどんどん集まっていった。そしてやがて一つの大きな国となったのだ。その巨大遺跡迷宮アスモデウスを囲むようにしてその迷宮に初めて入ったと呼ばれる初代国王テルミアが納める迷宮の国テルミアができあがったのだ。



「へー、そんなことがあったんですね。」

俺たちは迷宮前に合った「迷宮ガイド」という無料のパンフレットのようなものを広げながら迷宮内を歩いていた。

「迷宮は地中から湧き出るんだな…。あ、おいイミナ見ろよ。迷宮って他にもいろいろあるらしいぞ。」

「わー行ってみたいですねぇ…えい。」

「そうだな…。何々?迷宮には10階層ごとにそれぞれ階層主がいて?それを初めて撃破すると階層主の落とし物(フロアドロップ)がもらえるらしい?それはとてもレアな装備であったり武器であったり魔導書であったりする?わお。そりゃあすげぇ。でなになに?」


ギィ

イミナはドアを開ける。


「階層主のいるフロアには必ず大きな扉がある。そこに入ると階層主が現れ、倒すことができなければ次の階層へは進めないだろうだって。でなになに?10階層のボスはミノタウロス…レベルは25で推奨ランクはC…ん?これか。」


ズガアアァァン

バタン


「え、うそリミドさんこれが階層主?ガントレットで殴って一発だったけど。」


あっさりとイミナは10階層を攻略してしまっていた。有名な迷宮ということもあり、迷宮内にはたくさんの冒険者がいた。ここまでの道、強い魔物は現れなかったのがその証拠だが、この迷宮は十階層までは新人冒険者御用達のいわばチュートリアルステージなのだ。俺がイミナの背中から分身体を出してパンフレットを読みながら、イミナが魔物を殴り飛ばしていく。すれ違う新人冒険者の目が異様なものを見るものだった。まぁたしかに謎の物体が幼い少女の後ろから生えているんだ、不気味だろうね。ただこの世界には従魔という概念もあるし、俺もそういう扱いで許容してもらえるのではないかと楽観視していた。魔物を蹂躙する姿は新人冒険者たちから見たら相当怖いだろうなぁ。俺らも新人なんだけどね。さっき冒険者になったばかりのピチピチだ。

あっさりと階層主を倒してしまいイミナは少ししょんぼりしてた。


「あのボスレベル22だそうだ、仕方がないだろう。もう一回ちゃんとやるか?パンフレットには階層主は扉を開けるたびに復活するって。もっかい戻って扉開けるか。」

「弱かったしいいよ、次いこ次。」






「えーと次の階層主は?グランスパイダー、蜘蛛だってよ。えい。」

「まぁ森で蟲には慣れたけど…あんまり好きじゃない。えい。」

俺らは襲い掛かってくる魔物を弾き飛ばしながらどんどんと階層を上がっていく。

「お宝…あれリミドさん食べて。」

「あむ。…うん、あんまり。」

さっきから宝箱はあるのだが、あるのは武器や防具だけ。たまーにお金が入っているのだがそれだけだ。武器や防具は弱いし、そもそもイミナには着れない。邪魔なだけだし金だけを持っていく。宝箱を俺が食べる、金だけイミナのカバンにしまう、武器とか防具は消化する。これでもポイントはもらえるのだが、有象無象といわんばかりに一個食べて1ポイントだ。低いポイントのスキルはだいぶとったし、今はもう少しポイントがほしいなぁと思う。


ギィ


ズガアアアァァン


バタン


イミナよ…頼むからそんなしょんぼりしないでくれ…顔が(´・ω・`)ってなってるぞ…。

「ま、まだ低階層だ。50階層はレベル60ぐらいの奴らが束になってもかなわなかったんだ、きっと楽しいぞ。それにその先にだって…な?」

実はこの時イミナもリミドも気づいていなかったのだ。レベル89。しかしあくまでこれはイミナのレベル。これにリミドという最強の補助が付いているのだ。そこらのレベル89ではない。レベル89+リミド,レベル89なのだ。

何が言いたいかというと、レベル89が二人分いるということだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る