性癖に○○しないと出られない部屋/ねずみ

作品名:性癖に○○しないと出られない部屋

作者名:ねずみ

性癖:徹底した自律、偶像である自覚

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054894762886


 『セッセセしないと出れない部屋』の調査をしていたはずの先生と助手が捕まったのは『性癖に共感しないと出られない部屋』だった!ババーン!!!

 という始まりなので結局はこの二人がセッセセする流れになるのかと思いきや、偶像であり続けようと努力している先生の推しの説明が始まり、その狂気ともいえる自己改造と自己犠牲の精神を慈しむ物語でした。

 特に先生が最後の方で語った


『そこには強い自律と奉仕があると僕は思う。彼は夢を見せている自負を持って、愛される子供であり続けている。その人物像が本来の彼とどんなにかけ離れていたとしても、引き受けた愛情を決して裏切らない完璧な幻想を見せる覚悟だ。人々は彼に劇薬みたいな愛を注ぎ、そして彼が愛されたぶんだけ、きっと誰かが救われている』


 というのが本当に良かったです。

 自らを他者に捧げる献身者が他者から崇められる偶像になるというのが皮肉が効いていてすごく好みですし、本人もその歪な関係を分かっていながらもファンからの愛を受け取り続けているというのが本物の献身者として尊敬できます。(無機質なブザーが鳴る音)

 その歪でいつかは破綻するであろう状況が分かっていながらも、今はファンの為に偶像で居ようという徹底した自立。本当に良い性癖です。

 まさかこういった形でこんな素晴らしい性癖小説を読ませてもらえるとは思いませんでした。ありがとうございます。




 ただ、本当は自己改造じゃなくて他者による洗脳なんじゃないのって可能性もありますが、そこは作者が『性癖:徹底した自律、偶像である自覚』と書いているので信じましょう。

 あんまり作品を疑ってかかるのは良くないですね。字面そのまま受け取る事も大事です。

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