入学試験⑥ 決勝戦、そして入学式…

「手加減はなしよ!」

「えぇ、約束ですから、本気で勝ちにいきます」

「私も全ての力を持って、あなたに挑むわ!ルーシッド、こんなわくわくする対戦は初めてよ!」

「私も同感です!」


試合開始の合図が鳴り響く。それと同時にルーシッドがいつものように、魔方陣を展開する起動キーを言おうとしたその時だった。


ルビアがいない?


そう、すでにそこにはルビアの姿はなかった。そして次の瞬間、ルーシッドは背後からの攻撃を受けていた。ほんの一瞬の出来事で、ルーシッドは全く反応できなかった。キンッ!という金属と金属がぶつかったような音がして、ルーシッドは自らの意志に反して攻撃を弾き返した。ルーシッドが振り返るとそこには何の姿も無かった。そして前を向き直っても、ルビアの姿はない。ルビアは完全に姿を消した。


自動防御フォートレスにより、死角からの攻撃を防御しました』


エアリーがルーシッドにそう伝える。ルーシッドは戦闘時には常にこの自動防御システム『フォートレス』を起動していた。無色の魔力を特殊な術式により結合させ繊維状にし、服を着るようにして身にまとうことで、反応できない攻撃からの防御も可能にする、ルーシッドのまさに最後の砦であった。


全く見えなかった。一瞬で後ろに?どんな魔法?そもそも詠唱をしていない!?


ルーシッドは魔法障壁で弾いたとはいえ、この模擬戦で初めて自分に攻撃を当てたルビアの能力について考える。


常時展開の魔法障壁ですって?…なるほど…本当に恐ろしいくらいに強い…でも、魔法自体が無効にされたわけじゃなく、!ならば、この障壁を壊すことも可能なはず!今度はイメージではなく、鋭くイメージでいけば!!


ルビアは自分の必殺の一撃を弾いたルーシッドに対して、改めてルーシッドの強さを認めるも、突破口を見つけ出そうとしていた。


考えろ、考えるんだ。ルビアの魔力色は何だった?


深緋色ダークスカーレット


名字はスカーレット。黒は後から足された?


ここまで使用したのは火属性と地属性……闇属性は使っていない。


いや、待って。


黒の魔力と言っているだけで、闇属性とは限らない。


さっきのは……



そうだ、だ!



滞空エアロステップ!!」

ルーシッドがとっさにそう叫んでジャンプしたその時、ちょうどルーシッドの影からルビアが短剣を真っ直ぐに突き出しながら飛び出してきた。ルーシッドは地面に着地することなく、空中の見えない板を踏んでいるかのように、そのまま空中に停止した。


「やはり……影の魔法でしたか!」

ルーシッドは、影の中から姿を現したルビアを空中から見下ろしながらそう言った。


「ご明察。『影の魔法』は『地属性』と合わせることで真価を発揮する。スカーレット家の本来の血統的な魔力はオレンジ系統の『緋色スカーレット』だけど、影の魔法を使うために黒を配合したってわけ。私の性分からして背後から敵を撃つってのはあまり好きではないのだけれど。しかしあなたも…さらっと空中停止なんて高等魔法を…」

手に持った漆黒の短剣を振り下ろしてルビアが答える。

「無色の魔力を結合させて、薄く引き延ばして板状にしてその上に乗っているだけですよ。先ほど攻撃を弾いた自動防御フォートレスと原理的には同じです。その短剣は…影に身を潜めて、相手の命を一撃で刈り取るという漆黒の短剣『カルンウェナン』ですかね?」

「はぁ…本当になんでも知っているのね…」

ルビアはあきれたようにため息をつく。

「それは…魔法によって具現化した剣ではなく、本物…ですか?」

「まぁ本物といってももちろんレプリカだけどね」

「なるほど、詠唱なしで魔法が使えたのはカルンウェナンの効果ですか」

「えぇ、神々の武器はそれ自体に特殊な効果があるわ。適した魔力を流し込むだけで効果を発揮する。魔法は一種類に限定されるけどね」

「これがとっておきのですか?」

「まぁ、これで勝てたら楽だったんだけどねっ…!」



“opFAte iBreG, shis, DOP, hes!!”(操影魔法シャドウオペレーション)

「あっ、短縮詠唱アブリヴィエイションッ!?」

ルーシッドの影から黒い手のようなものが伸びてきて、ルーシッドの足をつかまえる。

「しまっ…」

その黒い手はものすごい勢いでルーシッドを引っ張った。ルーシッドは突然の事態に反応できず、無色の魔力で作った透明な板から滑り落ちる。その先にはルーシッドの影から姿を現したルビアがいた。ルビアは手に持っていたカルンウェナンを鋭く突き刺す。


噴射エアロキャノン!!」


ボンッ!!という大きな破裂音がして、ルーシッドは重力を無視した動きで真横に吹き飛び、足をつかんでいた手を引きはがし、地面を転がるようにして着地する。

短縮詠唱アブリヴィエイションとは…つくづく驚かされます」

「それでも…あなたの詠唱速度には及ばない…」


短縮詠唱アブリヴィエイション』は、詠唱文の中から必要な情報を抽出し、つなぎ合わせることで、詠唱を短縮する手段のことである。時間も短縮され、しかも詠唱文から何の魔法かも推測されることがないという、現在発見されている中では最強の詠唱法であった。しかし、短縮方法に一定の決まりがあるわけではないため、発見はかなり難しいので、非常に高度かつ特異な技術であった。


“DOP, return, gulp me, wear U”


ルビアがそう唱えると、ルーシッドの影から黒い塊が分離し、ルビアの影に戻った。そして、その黒い塊はそのままルビアを飲み込み、ルビアの体に漆黒の服を形成していく。それは漆黒のドレスだった。大胆に胸元と背中が開き、右脚も太ももに至るまで大きくスリットが入った妖艶な黒のドレス。しかし、手にはめたレースの手袋からは長い爪が生え、背中からはカラスのような漆黒の羽が生えていた。特徴的だったスカーレット色の髪も真っ黒に染まっていた。その妖艶さと恐ろしさが入り混じったルビアの姿に会場が異常なほどの熱気に包まれた。


「なっ……?」

「これが我がスカーレット家が開発した影の究極魔法『影装束シャドウドレス』。もはや私は、私の影と一体。私に攻撃することは影に攻撃するのと同じこと。すべては無意味!」

そう言うと、ルビアはその漆黒の羽を広げて空に舞い上がった。


「私の全てをこの一撃に込める!!行くわよルーシッド!!!」


“oPen the fiAry GATE.

(開け、妖精界の門)


in-g,rE,DIeNT = scar-LET.

(食材は緋色の魔力)


re:ciPE = FEuiLLE-TagE.

(調理法は折パイ)


greAT SOLaR DeiTY, LUGH.

(偉大な太陽神ルーよ)


pLEAse L-END Me UR BURNing jave-LIN.

(我に汝の灼熱の槍を貸し与えたまえ)


shoOT the EnEmY! DeaD shot magic jave-lin, MAGIC NAME = BRIONAC!!”

(敵を撃て!必中の魔槍『ブリューナク』!!)


ルビアがそう唱えると、振り上げた右手に炎が集まりだし、真っ赤に燃え盛る槍が形成されていく。だが、それは槍と言うにはあまりにも巨大であった。神殿の柱のような太さの槍がどんどんとその形を形成していく。


「うわぁ…神位魔法…かつての大戦で使用され、ドラゴンをも一撃で滅すると言われる魔槍『ブリューナク』…1人の魔法使いで神位魔法を発動するとは…全く恐ろしい…とても人間一人に対して向ける武器じゃないですね~…いいでしょう!真正面から受け止めます!!エアリー!最大火力で迎え撃つよ!」

『了解です』


術式コード氷結フリージング

形態モード投擲槍ジャベリン



ルーシッドの前に大きな魔法陣が一つ、そしてルーシッドの後ろには円を描くようにいくつもの魔法陣が展開される。


照準固定フィックス!!」


ルビアに向けて大砲の銃身のように魔法陣が幾重にも構成される。


術式展開ディコンプレッション!!」


ルーシッドの前の空気の温度が急激に下がり始め、氷が形成されていく。その氷の塊はルビアに向けて展開された魔法陣に沿ってどんどんと伸びていき、槍のように先端が尖っていく。


「力と力の真っ向勝負です!!」

「望むところよ!!」


「「いっけぇえぇぇぇえぇぇぇぇ!!!!!」」


ルビアが腕を振り下ろすとルーシッドに向けて灼熱の魔槍『ブリューナク』が真っすぐに飛んでいく。それと同時にルーシッドの作った氷の槍も重力に反して、空気を滑るようにしてルビアに向けて飛んでいく。

『魔法』と『魔術』2つの槍が空中で激突した。客席まで届くほどのものすごい音と衝撃波が発生し、ぶつかった衝撃でルビアの灼熱の槍の先端は形を変え、四方八方に炎が広がる。ルーシッドの氷の槍も一瞬でその先端が蒸発した。そしてルーシッドの氷の槍がすべて蒸発するのと同時に、ルビアの投げた灼熱の槍も熱を失い姿を消す。


「はぁ…はぁ…私の今使える最強の魔法をもってしても…相打ちどまり……」

「素晴らしい魔法でした!お世辞抜きであなたは今まで戦った中で誰よりも強かった!」


術式コード放電ライトニング術式展開ディコンプレッション


ルーシッドがそう言うと、ルーシッドの前でバチバチと放電が発生し、その光がどんどんと強くなっていく。そして、それが水晶玉のように球体になり、ルビアに向けて飛んでいく。

「ま、まさかっ!シャドウドレスが…消えていく…!?」

ルーシッドの作った眩いほどの人工光源体に照らされたところから徐々にルビアのドレスがはがれていく。そして、背中の翼も光に溶けていくのと同時にルビアは自由落下を始める。

「きっ、きゃあぁあぁぁぁ!!」

ルビアは思わず悲鳴を上げる。会場からも悲鳴が上がる。しかし、ルーシッドが落下地点に走っていきルビアを見事にキャッチした。

会場からは大迫力の戦いのフィナーレに対して、割れんばかりの歓声と拍手が送られた。


「あっ、ありがとう…」

ルーシッドにお姫様だっこされる形となり、照れながらルビアが感謝を伝える。

「いえ…大丈夫ですか?」

「う、うん……あーぁ…やっぱり全然かなわなかったなぁ…」

ルビアは天を仰いだ。自分が持っている全ての力を出し尽くしても、全く歯が立たなかった。

「いや、そんなことは…ホントにルビアは強くて、綺麗で、かっこよかったですよ」

「ふふっ、ルーシッドもね」

ルーシッドは少し恥ずかしそうに顔を赤くした。

「る、ルーシィと呼んでください…親しい人はそう呼ぶので…」

「じゃあ、私の事もルビィと呼んで。親しい人はみんなそう呼ぶわ。それにその敬語もやめてよ」

「わ…わかったよ…る、ルビィ」

「……ねぇ?さっきから何で目を合わせてくれないの?ルーシィ?」

「いやぁ…その…目のやり場に困るというか…」

「えっ…?」

ルビアが自分の体を見ると、そこには服が無かった。つまり全裸だったのである。シャドウドレスの魔法が解けたことによって、服がはがされてしまったのだ。本来であれば元々着ていた服に戻るはずなのだが、予期せずに魔法の効果が切れて、換装がうまくいかなかったのだろう。

「きゃあぁぁぁ!!ちょっと、ルーシィ!?知ってたんなら、あんた魔術で何とかしなさいよ!!あんたの魔術は万能でしょ!?」

「無理だよ、だって、私の魔力はだもん…」





会場はいまだに冷めやらない熱気で満ちていた。

そんな中、フランチェスカも興奮ぎみにサラに言った。


「ルーシッドもすごかったけど、ルビアもすごかったわね…」

「えぇ…」

「良かったわね、これでルーシッドも入学できるわね?」

「そうね…」


そうは言ったがなかなか難しいだろう…とサラは思った。あの頭の固い教師陣が何癖をつけてルーシィを入学させないという可能性は高い…ルーシィは本当によく頑張った。目立つのが嫌いな控え目のルーシィが、私の「一緒の学校に通いたい」という無理なお願いに答えるために一人で頑張ってくれた。



ここからは私が頑張る番。


ここからは私の戦いだ。




入学試験の全ての日程が終了し、ディナカレア魔法学院の大会議室では合格者を決定する会議が行われていた。やはり会議の中でも話題はルビア・スカーレットでもちきりであった。

「いやぁ…ルビアの魔法力は頭一つ抜きん出ていましたね!」

「スカーレット家は謎が多い一族ですが、まさかこれほどの実力とは…」

「数々の高難易度魔法もそうですが、断章詠法フラグメントキャスト短縮詠唱アブリヴィエイション…いやはや…とてつもない魔法技術です」

「今回の主席はルビアで決まりですな!」

みなが興奮したようにルビアについて話す。去年のサラ・ウィンドギャザーといい、優秀な生徒が在籍しているとなれば、学院の知名度や評価もさらに上がるからだ。しかし、そんな中一人の教師がおずおずと話す。

「でも…優勝したのはルーシッド・リムピッド…ですよね…?」

「あぁ…あのFランクの…無色の」

「…実は、彼女はペーパーテスト満点だったんです。満点は入学試験史上初です」

「な、あの超難問の最終記述問題に答えを出したというのか?」

「はい、完璧、というか、何というか…出題した私たちですら思いつかないような極めて斬新な発想でした…」

「いやしかしだな…Fランクが合格したという前例がない…」

「そうですよ、そんな者が合格したとなれば、我が学院の名に傷がつきます」

「しかしどう説明します?公衆の面前で彼女はその実力を示しましたよ」

「簡単な話です。あれは『ルール違反』です。魔法実技試験のルールは『魔法を使用すること』です。あれは魔法ではありません。なので失格ですよ」

「な…なるほど…確かにそれなら理由になるな…」

今まさにルーシッドの不合格が決定しようとしていたその時だった。


「失礼するわよ~」


一人の女性が会議室に入ってきた。

「り、理事長!!」

「どう?合格者はだいたい決まった?」

「はい、ぼちぼちと!」

「いい?厳正中立に頼むわよ?ペーパーテスト、魔力測定、実技試験の評価だからね、うちの学院は」

「はい、それはもちろん…」

「いやぁ、しかし今回も燃えたわね!特に決勝戦!何あれ?1対1の魔法使いの対戦?あれが?ある生徒が『ラグナロク』だって言ってたわよ。いいセンスしてるわね~」

「ははは…」

「……でもあれよね、ルビアの魔槍『ブリューナク』は、あれは『ルール違反』よね?あれ対人用じゃないわよね?あれはドラゴンレベルの魔獣を一撃で仕留めるレベルの魔法よね?あんなの一人の人間に向けて使うなんて頭おかしいわよね。あれは『ルール違反』。残念ながらルビアはルール違反で不合格ね~。いやぁ、残念ね~」

「い、いや…しかし、あんな素晴らしい才能を持った魔法使いを不合格にするのはちょっと…」

「理事長、そのくらいは大目に見てもいいんじゃないでしょうか?結局相手は無傷だったわけですし。それにあれほどの威力の神位魔法を単独で発動できるほどの優秀な魔法使いを入学させないというのは…」


「でも相手が死ななかったのは、相手がその神位魔法と同等の魔法で迎え撃ったからよね?」


その言葉に一同が沈黙する。


「いや…まぁ、それを抜きにしてもやはり、理事長が言っておられたようにやはりルビアは合格かと…」

「そっか…、うん、そうよね……じゃ不合格にならないわよね。だって判断するんだものね


……じゃあ、ペーパーテスト満点で、模擬戦優勝のルーシッドも合格よね?」


「あっ、あの、いや…しかし、彼女は…」

「無色の魔力、Fランクだから?」


再び一同が沈黙する。

「興味深いと思うのだけどねぇ。気にならない?あのとてつもない力の秘密。私は気になるけどなぁ、お話してみたいわ~」

皆が何も答えないので理事長は一つの提案をした。

「……わかりました。じゃあこうしましょう。ルーシッドは、やっぱり不合格とします」





一週間後、ディナカレア魔法学院の合格発表者が公開された。

しかしそこにルーシッド・リムピッドの名前は無かった。





時は少しばかり過ぎ…


ディナカレア魔法学院は今日入学式を迎えた。壇上では今回の主席に選ばれた生徒が答辞を述べていた。それは全員の予想に反してルビア・スカーレット

模擬戦優勝のルーシッド・リムピッドは不合格。準優勝で主席に選ばれたルビア・スカーレットは主席を辞退した。ルビアは新入生の席に座って不満そうに腕を組んでスピーチを聞いていた。


「ルビィ、何で主席辞退しちゃったの?」

隣に座っていたフェリカ・シャルトリューがルビアに小声で尋ねる。ルビアとフェリカはルーシッドの一件以来、すっかり仲良くなっていた。

「今回の主席は私じゃない。ルーシィよ。ルーシィがいないのに私が主席だなんて筋が通らないわ。今回の主席は本来なら空席のはずだわ」

「ルビィ男前。惚れ直しちゃう。あーぁ…ルーシィか~…どうしてるかなぁ…一緒の学校に通いたかったなぁ」

「……私だって…家の事情がなければ、ルーシィの凄さがわからないこんなクソみたいな学校なんて辞めてやるところよ」

「わーぉ、ルビィかっこいー!惚れ直しちゃう!」

「何回惚れ直すのよ、あんた」


そうして入学式は滞りなく終わり、それぞれがクラスに分かれ、担任の先生が挨拶し、クラスメイトもそれぞれが自己紹介をする、という最初の顔合わせが行われていた。ルビアとフェリカは同じクラスになっていた。クラス分けは入試の成績を元に決定されるが、実質的に一番魔力ランクが高いルビアと、今回の合格者のうち最も魔力ランクが低い(Dランク)フェリカが同じクラスというのは、均等を測っての事だろう。


「えー、じゃあ最後になりますが、皆さんに転入生を紹介します」

担任の先生がそう告げると、クラスはどよめいた。入学式の日に転入生なんて聞いたことがない。どんな事情があると言うのか。

「じゃあ、入ってください」

先生の呼びかけに答えて、転校生が扉を開けて入ってくる。

「ちょっ…る、ルビィ!!ルビィ!!!」

つまらなそうに窓の外を眺めていたルビィの肩を隣の席のフェリカがバシバシと叩く。

「いたっ、痛いってば…一体なんだってい…ぅ………」



「あ…あの…どうも…ルーシッド・リムピッドです。ちょっとした事情で、正式な入学ができずに、転入という形になりましたが、よろしくお願いします」

ルーシッドはぺこりと頭を下げた。


ルビアは席を勢いよく立ち上がった。目に涙が浮かぶ。

「やぁ…ルビィ、ひさしぶっ…!」

ルビアは席から走り出してルーシッドを強く抱きしめた。

「ちょっと…ルビ、ぐえっ…!」

遅れて走ってきたフェリカも抱き着く。

「入学おめでとう…ルーシィ…!」

「ルーシィ!!会いたかったよー!!」

「あはは…ありがと、心配かけてごめんね」




「……わかりました。じゃあこうしましょう。ルーシッドは、やっぱり不合格とします。


代わりに転入生ということにします。我が校の転入試験は、以前の学校などからの推薦状があれば、『ペーパーテストのみ』で良いというルールです。ルーシッドに関しては、入学試験のペーパーテストの成績から見て、これも免除します。推薦状は私が書いても良いのだけれど、サラ・ウィンドギャザーが先ほど私の所に直々に持ってきました。彼女ほどのしっかりとした実績がある魔法使いからの推薦状ならそれで十分でしょう。何か異論はありますか?」





入学式に出席していたサラは小さな声で、そこにはいない自分の親友に歓迎の挨拶を送っていた。



「ようこそ、ディナカレア魔法学院へ」

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