イグニスくん誕生

(えっと、ご主人さま落ち着いてください)


 なんか焦ってるような火を見てニヤリと微笑む私。


「ねぇきみ? 名前は?」

(名前ですか? ありません)

「さっき ぼく って言ってたけど男の子?」

(いえ、そもそも性別とか無いですし)

「じゃあまず名前決めよう!」


「ん~火だから炎太えんたとか?」

(えー)


漆黒しっこくの炎!」

(えー)


「爆炎っち!」

(ご主人さま、ぼく生まれたばかりでよく分かりませんけど、ネーミングセンスないです?)

「っつ!!」


 気にしていることを~!

 昔友達から「あおいちゃんセンス無いよね」と言われた時の記憶が甦る。


「ちょっと待って」


 そう言って私はスマホを取り出す。


「火 寄生虫 名前」検索……

 アニキサス……検索ワードに寄生虫がヒットしたみたいだ。


「火 外国語」

 ファイヤー……ほかは……!?


「決めた、名前はイグニス!」


(おーー格好いいです! じゃあ、ぼくは今からイグニスです)


 火が揺らめいて喜んでいるように見える。


「それでイグニス、私はあなたと一緒にどう戦えば良いの?」

(わかりません)

「ワタシ イグニス タタカウ イッショ」

(言葉はわかります!)

(じょうだんは置いておきましょう)

「……」


(魔女さまは体内に僕たち アニママス と呼ばれる魔物を寄生させています。

 僕たちは魔女さまの魂から栄養をもらわなければ生きていけません。代わりに僕たちは火や水などを自らに宿し魔女さまに力を貸します)


「……」


(本来魔女さまが認めた人に僕たちを分けて譲ります。そこで使い方を教えて行くんですが……ぼくの場合、前の魔女さまの魂と共にご主人さまと混ざりそこから新たに生まれたみたいなんで記憶が曖昧です)


「……」


(だから火を宿すのはわかるんですけど、どう戦えば良いのかがわかりません。ごめんなさい)


「イグニス……生まれたばかりなのに賢そうだね」

(えっ、今の説明の感想がそれですか!)


「じゃあさ、どうしたらイグニスを強く出来るの? もっと火力上げると言うか」

「こう経験積んで、てってれー! て感じはない?」

(てってれー! がなにかはわかりませんけど、ないと思います)

(ぼくたちは、魔女さまの魂に依存するので、ご主人さまが強くなれば比例して強くなると思います)

「訓練するしかないのか……」

(さて、ぼくはもう眠くなってきたので一旦帰ります)


 そう言うと火は手のひらから消えていった。


「イグニス?」

(ご主人さまの体に戻りました。ちょっと寝ますね。ぼくはいつでもご主人に寄生してますよ)

「!? 寄生言わないで! なんかゾワってした。体かゆい……」


 こうしてイグニスとの寄生生活は始まる。

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