エピローグ

 ぶくぶくぶく

 ぶくぶくぶく


 身体がどんどん溶けて、泡になって海に流れていきます。

 大きな泡、小さな泡が、ゆらゆら揺れ上りながら、ぷつん、ぷつん、と弾けていきます。


 大きな泡がぶつん。

 小さな泡がぶつん。


 自分が溶けてなくなっていくというのに、それを見て、人魚姫の顔には、笑みが浮かんでいました。

 たったいままで、不安で不安でたまらない、そんな表情であったというのに。


 泡の一つ一つの中に、浮かんでいるものに気が付いたからです。

 大切な、宝物を。


 そうです。

 考える必要など、はじめからなかったのです。

 神様に尋ねる必要も、なかったのです。

 幸せであったのかなど。


 腕が完全に溶けてなくなってしまうと、続いて胴体が溶け始めました。

 どんどん、どんどん、小さくなっていきます。


 でも、人魚姫は笑っています。

 とても楽しそうに。


 こうして彼女の全身は完全に泡になり、ゆらゆら揺らめき、ぷつりぷつりと弾けながら、青い青い海へと溶けていきました。


 人魚姫のお話は、これでおしまいです。

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