第6話 ほう、炉心抜きゴーレムですか……エネルギー効率が極めて高いとか
葉っぱ、葉っぱのゴーレムだと?
踊って、舞って、魔術工房中へ進出するだと?
そんな訳の分からないことが、起こりえるのか?
「せ、先生、どうなってるんですか? わたし、何もしてないのに、勝手に葉っぱが動きだして……」
先生もなにが起きてんのか聞きたい!
ただ、まったくもって、理解に苦しい状況だが、およそこの「
「ウィンディ、なんて葉っぱがゴーレム化して動いているのか、俺にもわからない。ただ、思うに彼らを動かしてるのは……ウィンディ、君自身なんじゃないか?」
「わたし、ですか? でも、わたし何もしてないですよ?」
「いいから、いいから。試しに彼らに作業机のうえに戻るようにお願いしてみよう」
ウィンディは、あまり納得がいってない様子で、両手を組み合わせて祈りはじめる。尊すぎて、こちらが成仏しかけるが、なんとか現世に踏みとどまる。
「あ、先生、なんだか、あの葉っぱさん達と
魔術工房の床やら壁やらを冒険し始めていた葉っぱゴーレムたちが、意思を統一したかのように、もといた作業机のうえへとくるり、ひらりと舞いながら戻っていく。
信じられない。
自分で言っておいて、まじ、ありえない。
今、起きたことを整理しよう。
俺の弟子ウィンディは、無意識のうちに魔力で硬化させた葉っぱを、ゴーレムに作り変えてしまい、あまつさえすべてのゴーレムを操ることが出来た。
これは異常だ。
まさしく神業に等しい。
「そうか……ウィンディ、君にはゴーレム作りの才能があったんだな……」
「っ! 先生、これがゴーレム、古代の遺跡や、魔物が蔓延る坑道に潜むといわれるゴーレムなんですか!?」
「そうだ。それも、ウィンディのゴーレムだ。君が、土に還り、栄養になるのを待つばかりだった葉っぱたちに命を与えたんだよ。その力を大切にするんだよ」
ウィンディの緑のふわ髪を撫でる。
「はい! わたし、この子たちのお世話をします! さあ、葉っぱゴーレムさんたち、こっちへ来てください!」
ウィンディが手招きすると、葉っぱゴーレム隊はゆらりくらりと、そよ風にあおられるように、彼女のうしろへと着いていってしまった。
凄いものを見てしまった。
感動に疲れて、ソファに体を投げだして横になる。
あの子の磨くべき才能が見つかった。
魔術によるゴーレム・クラフト。
噂レベルでなら聞いたことがある。
天然素材に、魔力でもって、人工的な
「はじめて見た……魔術ゴーレム……ッ!」
本来ならばゴーレムとは「
錬金術師や仕掛け魔術の分野でおいて開発される。
複雑怪奇な動作原理、効率の追求されたエネルギー消費、考えぬかれた動作、用途に合わせたデザイン。
手間暇かけて、からくり人形を組み立てるように作るのが、一般的なゴーレム。ここでは仮に″錬金術ゴーレム″と呼ぼう。
して、今しがた、うちの弟子がやったのは、見てのとおり″葉っぱのゴーレム″だ。
まず、錬金術師が作ろうなんて考えないような形状。そしてなによりもサイズ!
あんな大きさの葉っぱに、動作機構を再現するなんて、拡大鏡とピンセットで数日かけて魔術による術式を刻みこんだとしてもありえない!
エネルギー効率に関しては、もはや未知の魔導だ!
魔力原動機にあたる機構も、魔力炉心もない!
あれは、ヤバイ。
それを、感覚的な魔力だけで組みあげるだと?
ダメだ、強化魔術なんか教えてる場合じゃない。
はやく最高のゴーレム職人を見つけて、未来のゴーレムマスターを育成しなければ!
⌛︎⌛︎⌛︎
翌日、俺は街の魔術協会へとおもむいて、ゴーレムを作れる錬金術師を探してもらうことにした。
報告が来るまでは、しばらく時間がかかる。
それまでに、俺が出来るかぎりの知識をウィンディに、教えてあげなければ。
街の市場でウィンディがゴーレムに出来そうな物を買い込んで、魔術工房へと帰宅する。
果物、ぬいぐるみ、樽いっぱいの水、服、鉱石、魔物の骨、ネズミや鳥などの小動物にいたるまで。
彼女の能力が魔術によるものなのか、他の人類がマネできない、先天的な能力なのかはわからないが、きっとあの力はまだまだ伸びる。
先生として、出来るすべてをしてやらないと。
「ウィンディ、帰ったぞ。さあ、色々なゴーレムを作ろう!」
「あ、先生! 見てください! 先生にもらった本がゴーレムになってくれました!」
「ぱたぱた、ぱたぱた、ぱた」
葉っぱゴーレム達をはべらせるウェンディの頭のうえを、俺の書いた『人体強化の魔術 Ⅰ』が、ページをパタパタと翼のように動かして飛んでいく。
ああ、俺の本って空飛んだんだ。
どういうわけか、俺は感動で涙が溢れてくるのであった。
ゴーレム、これで行こう。
俺は決意を固くした。
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