5枚目 1500円はいい値段

 公園の屋根付きベンチに腰掛けて、私たちはポップコーンにジュース、CDやレコードを出して聴き合いをしています。


「いやー、あたしの盤っていうかカセットだけど、これは当たりだったな。ちょっとだけ高かったけど。」


「いくらだったん?」


「学生割引効いて1500円。」


「いい値段するなぁ~。」


「でもヒメはさすがの慧眼だねえ!私のこれはどうなんだろう、ジャケで買っちゃったんだ~。フクロウとウサギがかわいくて。」


「テンコはジャケ買いなのね、顔に似合わず豪胆よね。」


「レコード盤か。どれどれ~、見せてくれよ~。」


「ちょっと待ってケイちゃん!指拭いて!ポップコーンの油がついちゃう!」


「こまけえなぁ~。えーっと、The Clienteleの"God Save The Clientele"か。」


 そう言いながらケイちゃんは指をきれいに拭いてからそのレコードを取る。


「ポータブルレコードプレイヤーなら私が持ってきてるわ。私もレコードを買う気満々だったから……。」


「サトちゃんさっすが~!」


 針を落とすと柔らかいギターに軽やかなベース、ストリングスが伸びやかに素敵なインディー・ロックが流れました。ジョギングをしている人がチラリとこちらを見る。


「おお、これは、一曲目の"Here Comes The Phantom"から良盤の香りがぷんぷんするな。優しくてノスタルジックなボーカルメロディーがイイ。」


「この淡くて湿り気のあるサウンドが最高ね。牧歌的だけれどドリーミーで。」


「これは当たりだよね?ね?」


「当たりじゃね―か、やるじゃんテンコ!」


「やったー!」


「えーっと、The Clienteleはロンドンのバンドで、このアルバムは2007年にインディー・ロックの名門Marge Recordsからリリースされてるな。」


「Marge Recordsなんだね~。Neutral Milk Hotel大好き!」


「おい、ポップコーンなくなったぞ!食い過ぎだぞケイ!」


「自分はそんな食ってねえよ!あ、歯に詰まってるや。」


「チョコレートも買ってきたから食べましょう。」


 しょっぱいものの後はやっぱり甘いものを食べなきゃね。


☆ ☆ ☆


The Clientele - God Save The Clientele - 2007

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