100話 未来と希望と……

 私とクラーナは、ゆっくりと歩いていた。

 今日は、私達の結婚式。記念すべき日だ。

 周りには、たくさんの人達がいる。私達がこれまで知り合って、親しくしてきた人達が、この日を祝福してくれているのだ。


 私の隣には、クラーナがいる。

 ウェディングドレスを着た彼女は、とても綺麗だ。こんな人とこうやって一緒に歩けるなんて、私はなんて幸せ者なのだろうか。


 私は、ふと会場の天窓を見つめた。

 空の上にいる私の大切な人達が、そこから私を見てくれているのではないか。そんな感想を抱いたからだ。


(……お母さん、それにお父さん、見ていてくれますか? 私は今、こんなにも多くの人達に囲まれています)


 私は、空の上にいる二人に思いを馳せた。

 なんとなく、二人は私のことを見てくれている気がする。二人一緒に、見てくれている気がする。


「ねえ、アノン」

「うん? どうしたの? クラーナ?」


 そこで、クラーナが私に小声で話しかけてきた。

 彼女は、とても穏やかな笑みを浮かべている。きっと、この結婚式を嬉しく思っているのだろう。


「こんな時だから、改めて言いたいの……私は、あなたのことが大好きよ」

「うん、ありがとう。私もクラーナのことが大好きだよ」

「……ええ、ありがとう」


 お互いに好意を伝え合って、私達は笑顔になる。

 こうやって、二人でいられる幸せを噛みしめながら、私達は結婚式に臨むのだった。




◇◇◇




 私とクラーナは、ブーケを持っていた。これから、ブーケトスを行うのだ。

 私達の目の前には、この結婚式に参加してくれている未婚の女性がいる。その中の誰かが、この花束を受け取るのだ。


「さて、それじゃあ、行くわよ?」

「うん!」


 私とクラーナは、ブーケを投げた。

 すると、そのブーケを飛び上がりながら取る者がいた。それが誰かは、考えるまでもないことである。


「あ、つい……飛び上がっちゃった……」

「本能というものね……」

「まあ、ラノアならそうなりそうだとは思っていたけど……」


 正直な話、こうなるのではないかとは思っていた。

 犬の獣人は、こういうことが得意だ。ボールとかフリスビーとか、そういうものを投げて空中でキャッチする様は、これまで幾度となく見てきた。

 そして、それを投げていたのは、私やクラーナである。そんな私達がブーケを投げるとどうなるかは、ある程度予想できていたのだ。


「ふふ、ラノアらしいわね……」

「そうだね……」


 私とクラーナは、ラノアを見つめる。

 あの子は、私達の希望だ。それを改めて、実感していた。

 彼女は、どんな大人になるのだろう。それを考えると自然と笑顔になる。ラノアのこれからが、私達は楽しみで仕方ない。


 きっと、これからも色々な困難はあるだろう。

 でも、乗り越えられるはずだ。私の隣に立ってくれる人と守りたいあの子がいるのだから、乗り越えられないはずはない。

 そんなことを思いながら、私はクラーナと笑い合うのだった。

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