Journey with Mermaid EP.4 ドムス(旧邸宅)

ドムス1‐1

 広場に出てからも笑いすぎてほおが痛い。


 何だか申し訳ない気持ちで、私は「ごめんね」とメアリに謝罪した。その言葉に彼女は「どうしたの?」と不思議がる。私は「いや、何となく」と答えをにごす。


 昼下がりの広場は日差しが強い。

 それでも風が吹けば、暑さは昼前ほどではない。

 メアリも元気そうで、広場や建物の様子を興味深そうに見まわしている。


 この区画は3~5階建ての建物が密集している。

 紀元前後の古代ローマにはそれ以上の階層まで存在したらしいのだから驚きだ。

 もちろん、当時としての技術的限界はある。

 それでも都市部の一般住宅としてこれらが普及ふきゅうしたのは、技術的にも驚異的きょういてきなことだと思う。これを当時の人は何をきっかけに思いついたのか。

 いや、必要に迫られた結果なのかもしれない。人類はいつもそうだから。


 日差しを避けて路地裏ろじうらを歩く。

 こちらは大通りとは打って変わり、道は非常に狭く壁に挟まれている。

 また、所々に剥がれ落ちた外壁が転がるが、歩く邪魔じゃまになるサイズではない。


 いくつかの路地を抜けて目的の区画に出る。境界には綺麗きれいに舗装された道路が横たわる。その向こうに1つずつ壁に囲まれた戸建て住宅の区画。


 ローマ式に呼ぶなら“ドムス”と呼ばれる邸宅ていたくが立ち並ぶエリアだ。

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