第63話 知識欲は止まらない

ナントが慌ただしくやってきた。

「おばちゃん!蒸気機関!ガンバロウに聞いた!」

言わんとしたいことは察するが。

「何でー!?」

食って掛かってきたよ…

「二兎を追う者は一兎をも得ずって言うの」

「は?」

「逆方向に逃げるウサギを、二羽とも捕まえるのは無理だって話」

自転車すごいことになってるのは知ってるんだよ。

こないだ行ってきた水車の村からも、注文が来てるよね。法整備されてから、あまり顔も出さなくなった。

「手一杯でしょ?」

「ううぅ…」

悔しそうに呻く。

「仕組みだけでも知りたい」

ガンバロウに聞いたんじゃないのか。

「じゃあね、ヤカンのふたを溶接して、注ぎ口を伸ばして、そこに…」

紙に描いていく。

「で、蒸気の力で口の方を閉じてるコレが押し上げられて…」

「水が沸いて蒸気になるなら、ヤカンの中は空になるし、口の方は力がかかりっぱなしにならない?」

いいとこに気付く。

「弁を付けて水を足すし、蒸気も抜くの」

「あ、そうすりゃいいのか」

目の色変わっちゃってる。しょうがないな。

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