第34話 事務文書

国王陛下の手が止まってらっしゃる。

こっちの手元が気になるようだ。

皆さん達筆でいらっしゃるので、目を細めたりして一文字ずつ書いております。読めねーよ。

さっきからエーリーズに聞いてばっかだよ。

それでも何とか書き写し終わった。

「聖女様に読めない字があるとは思いませんでした」

言い訳させてね、手書き文字は、ね。

会社にもいるんだよ、せめて丁寧に書けって言うのに、鼻クソやらミミズやら金クギやら。読めないっての。

書き写してる間にだいたい読み取った内容を、定型の横書き事務文書にざっくり変換する。

右肩に日付。写した文中の日付に上から取り消し線。

通達先、これは各位…、やっぱ抱え込んでる。

発信元、どれだっけ、これか。取り消し線。

次は件名、少し大きめセンタリング。

適度に改行を入れつつ、漢字に置き換えて、下記を一、二、三、と四はいらないか。

ワープロが恋しい。

「これは字なのですか?」

「漢字だよ」

海を越えた輸入品だよ。

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