第10話原初祭壇都市

まさか本当に何もないとは思わなかった。

見渡す限り山、山、山、、


いや場所の問題かもしれない。

とりあえず近くの山を調べてみよう。


どうせこの辺りは山しかないんだ。

行くしかない。


目の前の山をそこそこ登っていくと視界が開けた場所に出た。


ガサガサ


深い茂みを分け入って

小さな祭壇が遠くに見えた。そしてその周りに、、、


何者だ


グリスのように頭に響く声。

「私は」


目の前の壁に向かって話すが誰に向かって話しているかの意識は私にはない。

それほどの「圧」だった。


「アリエス・ルゥ。あなたがここの代表でしょうか?」


念のため礼式に則った言葉で話す。


代表?

代表とは何だ?


壁のように見えたそれは見上げるほどの大きさの龍だった。

それは昔何かの書で見た蜥蜴のような姿に立派なニビ色の鱗をしていた。


「ッ、、、つまりリーダーでしょうか?」


わからぬ


ここには私以外にも沢山の神獣がいるが、、


「ん?なぜここにリットミールが」

おかしい。

私が跳ばされた世界はファーリアではないのか?


彼と話している背後の祭壇には傷一つない紅子結晶リットミールと思われるものがあった。


時間軸のズレ?いやまさか。

刻鉱石ハイグリードは使っていない。

天岸?

しまった祖父の魔力がまだ、、、


どうした?何かあったのか?


「いや、別に何も問題ない」


そうだ。私が少し前の時代に来ただけだ。


たぶんダイムの力がなければ、こんなことにはならなかった。

しかし、ダイムの力なしにはファーリアにも来れなかった。


なら私はここで生きるしかない。


「赤龍よ!頼みがある!」


なんだ。言ってみろ。


「私はこの土地に疎い!しばらく身を寄せても構わないだろうか!?」


普通の会話でこんなに声を張り上げたのは初めてかもしれない。


私は構わない。


「ありがとう!」


では始めに鉱石の採掘をしたいのだがこの辺りで採れそうな場所はあるだろうか?


鉱石、、それなら隣の山だ。


「すまない!ありがとう」


私は言葉を告げると山を降りていこうとした。



待て。今わかった。代表というのはお前のようなヤツを言うのだな。


では心当たりがある。


原生鱗神龍げんせいりんしんりゅう様だ。


私はその下になる。


神龍様が生み出した結晶のこれを守る役目を我々で仰せ遣っている。


ただそれだけだ。


「わかった。ありがとう」


それだけ言い残すと私はすぐに山を降りた。


元素分解してしまった手前、カバンなどの所持品のない私は泊まり込む用意は勿論住処すらない。


ゼロからの出発になっていた。


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