28話 リーン
両親は信仰心厚く、敬虔な人達だった。
私はそんな両親の元、信心深く厳しく育てられらた。
少しでも悪戯をすると、激しくぶたれ。
一晩中くらい倉庫に閉じ困られた。
子供の頃はそんな両親の躾を疎ましく考えもしたが、今では心から感謝している。
両親の深い愛と教えがあったからこそ神を信じる幸せと、感謝する事のすばらしさを知る事が出来た。
両親と同じく敬虔な信徒となった私は、いつしか聖女と呼ばれるようになる。
人々は私を奇跡の聖女と囃し立てて私に期待を寄せ。
私は神に感謝を感じながら、満ち足りた日々は続いた。
ある日、兄が久しぶりに家に帰って来た。
兄は両親に反発し、素行が悪く。
街で暴れた罪でレジェンディアの街を追放の身となっていた。
その兄が3年ぶりに帰って来たのだ。
「人を殺してしまった」
「なんという事を!」
兄は事故で人を殺してしまったと口にする。
その話を聞いて両親は驚き、激高した。
その後兄と両親は口論となり、そして兄で両親を殺してしまう。
「ち、違う、態とじゃないんだ……事故なんだ……う……うぅ……」
兄は蹲って涙を流す。
私はそんな兄を冷ややかに見つめた。
両親が死んだ事は別に悲しくはない。
何故なら、敬虔だった両親は神の身元へと旅立っただけなのだから。
問題は――
「リーン。お前は俺の見方だよな……助けてくれ」
「ええ、勿論です。お兄様」
「ありがとう。ありがとう」
私に縋って泣く兄の首を、私は魔法の刃で断ち切った。
血が勢いよく吹き出し私の体を汚す。
以前大司教様は言っていた。
罪人は何処まで行っても罪人なのだと。
その時は、そんな事はない、人は変われるものだと反論したが……
両親を手にかけておきながらその罪を認めようとせず、自分の事しか考えない醜い兄を見て、大司教様の言葉が事実だと確信する。
そして魂まで穢れきった兄を救うため、私は兄を神の身元へと送ったのだ。
「だから処刑するべきだと言いましたのに」
レイラが殺されたと知らせを聞き、呟く。
彼女が殺されたのはどうやら1年前らしく、ガルガーノの脱走のタイミングと合致していた。
その事から、これがガルガーノの仕業である事を私は確信する。
神の領域へと足を踏み込んだ、忌むべき魔術師。
彼の穢れた魂を救うには処刑しかない。
そう何度も言ったのに、彼らは聞き入れなかった。
リーン王女は兎も角。
それ以外の面子は罪悪感からか、命を奪う事を良しとはしなかった。
全く困ったものだ。
「まあ……レイラはいずれ浄化する予定でしたから、構いませんけど」
彼女は
色々あって後回しにしてはいたが、何れ神の名の元に浄化される運命だった。
罪人同士互いの罪を喰らいあってくれたのなら、手間が省けたという物。
「
儀式を用い、神の炎を召喚する計画。
神炎は全ての
その炎を持って世界を浄化し。
罪人達に救済を行う。
それが
「待っていてください。貴方がこれ以上罪を重ねる前に、私がちゃんと止めてあげますからね」
私は膝を付き。
神への祈りを捧げる。
それは全ての罪を、この地上から無くすと誓う――神への宣誓。
私は神の名の元に、この世界を浄化する。
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