14話 港町ラバン
「さて、カモを探すとするか」
港町に辿り着いた俺は、路地裏にはいりカモを探す。
こういった場所には輩と呼ばれる手合いがいる物だ。
俺はここからオキアネス諸島に渡るつもりだが、当然それには船賃が必要になる。
それも正規ではなく、裏ルートで入る為かなりの金額が。
言うまでもないが、脱獄したばかりの俺は無一文だ。
つまり俺は金を稼ぐ必要があった。
しかし追われる身としては、普通に働いて稼ぐわけにもいかない。
だからと言って、悪党に成りきって善良な市民から巻き上げる様な真似もしたくはなかった。
結局俺は苦肉の策として――
「おうてめえ、ここらじゃ見ない顔だな」
路地裏を歩き回っていると、ガラの悪い3人組に絡まれる。
1人は痩せ型のモヒカンで、手にナイフを握っていた。
残り二人は素手のマッチョだ。
3人とも首筋や腕に入れ墨が入っており、明らかに真面な人生を送っていないのが分かる風貌だ。
「カモがさっそく引っ掛かってくれたか」
――輩と呼ばれるろくでなし共から金品を巻き上げる。
それが俺の考えた金策だ。
相手がロクデナシなら金を奪い取っても良心は痛まないからな。
もしそいつが何らかの裏組織に繋がっている様なら、情報を引き出し更なる現金ゲットのチャンスも得られる。
街をクリーンにしつつ船賃を稼げる事を考えると、我ながら最高の案と言える。
しかも脛に傷持つ連中だ。
政府に通報される確率も低いだろう。
「あーん。てめぇ今なんつった?」
モヒカンが顔を歪めて俺の顔を覗き込み、手にしたナイフの腹を俺の頬にピタピタと当ててくる。
絵にかいたようなチンピラだ。
思わず笑いそうになってしまったが、ぐっと堪えた。
そのまま無言で殴り倒しても良かったが、俺は優しいので痛い目を見る前に降参するチャンスを与える事にした。
頬に当てられたナイフを握る。
そしてそれを――俺は勢いよく握りつぶした。
バキンとナイフが砕け散る音が辺りに響く。
砕けた破片が勢いよく飛び散り、モヒカンの頬を掠めた。
「ひゃっ!?」
そこから血が伝い落ちる。
これで実力差を理解してくれればいいのだが、この手の輩の知能は驚く程に低い。
それを期待するのは無理と言う物か。
「てめぇ!ぶっ殺してやる!」
激高したマッチョが殴り掛かってくる。
俺はそれを片手で受け止め、握りつぶす。
「ぎゃあぁぁぁぁ!手がぁ!!」
今度こそ実力差が理解して貰えた事だろう。
その証拠にもう一人のマッチョが背を向けて逃げ出そうとする。
俺は素早くそいつの膝裏を蹴りに抜き、膝を砕いた。
「があぁぁぁぁっ!?」
そしてそのままそいつに近づき、その両肩を踏み抜いて砕いた。
男の雄叫びが止まり、ビクンビクンと体を痙攣させる。
最初はここ迄やる気は無かったのだが、仲間を見捨てて――それは裏切り行為だ――逃げようとしたこいつにかつての仲間の姿を重ねた俺は、思わず頭に血が上ってやり過ぎてしまった。
まあ死んではいないし、仮に死んでもこいつは屑だ。
気にする必要は無いだろう。
「おい。金と情報を出すか、それとも死ぬか選べ」
「ひぃぃぃぃ」
モヒカンは悲鳴を上げ。
慌てふためきながらけつポケットから革袋を取り出し、俺に差し出した。
中を検めると結構な額が入っている。
これは街のチンピラ風情が持つには不自然な額だ。
間違いなく何らかの組織に繋がっているだろう。
「ひぃぃぃ!命ばかりはお助けぇ……どうか命だけはぁ……」
いきなり当りを引いて口元が緩んでしまったわけだが。
その表情が余程怖かったのか、モヒカンは頭を地面に擦り付け命乞いを始める。
俺はマッチョ2人からも財布を回収し、口を開いた。
「お前達の元締めはどこだ?それを素直に白状したら命だけは助けてやる)
船賃的にはもう十分だが、新生活に向けてもう一稼ぎしておく事にする。
何せあてなどまるでない渡航だ。
金はあればある程いい。
「そ……それでしたら……」
モヒカンは命惜しさにペラペラと喋る。
情報を聞き終えた俺はモヒカンとマッチョを当身で気絶させ、上着を剥いでそれに着替えた。
外を歩いていてもそれ程違和感のある囚人服ではないが、一応念の為だ。
さて、情報の場所へ向かうとしよう。
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