街頭インタビュー
夕食を食べ終わった秀幸はリビングのテレビをリモコンで点けた。ちょうどニュースが流れている。
『本日、また尼崎市に怪獣が現れました。怪獣が現れる事に市民達も慣れてきているようで、町おこしの一環として利用されているようです。住まいを破壊された方達はお気の毒ですが、国の特別災害に指定され手厚い保証があるようです。』ニュースキャスターは笑顔でこの話題を伝える。他の災害だったらこんな風に笑って報道は流石にしないだろう。なぜか奇跡的にいつも怪獣が襲来してきても建物は激しく壊されるものの、死者やけが人、行方不明者が出た事は一度もないそうだ。
街頭インタビューが始まる。
『もう、怪獣が出たらゾクゾクと興奮しちゃって!最終的にはミラクルワンが退治してくれるから安心だし!』
『知り合いは、怪獣保険に加入していて壊される前より立派な家になったって喜んでいます』
「なんだ、こいつら呑気なコメントしやがって!」秀幸は親指の爪を噛みながらイライラを口にした。
「そうだな、ミラクルワンがいるから呑気にできるけれど、際限なく怪獣が暴れたらこんなコメントは出ないだろうな」食後のコーヒーを口にしながら父は呟く。その傍らに母が一緒にソファーに座っている。その肩を父が抱いている。
「私は、ミラクルワンってあまり好きになれないわ。なんだか怪獣をいつも虐めて可哀想よ」いやいや、その意見は流石におかしいでしょと秀幸は思った。
「いやいや、母さん、それは無いだろう。怪獣が町を壊すのを彼が守っているんだから感謝しなくちゃ」父の意見が珍しく母の意見と食い違う。
「もう、お父さんはそんな事言って、ミラクルワンだっていつも町を壊してるわよ」母はなぜか膨れっ面をした。
「いやいや、こりゃ一本取られましたな」父がそう言うと二人は相変わらずじゃれ合いながら爆笑をした。
「こんな怪獣が頻繁にこの町に表れる事が異常なんだ!平和を取り戻す為にミラクルワンは必死に戦っているんだ!」秀幸は立ち上がって大きな声を出してしまった。
「どうしたの?なにかあったのか」父が少し心配そうに聞いた。
「いいや、別に・・・・・・」秀幸はなぜか口ごもった。
「疲れているなら、早く寝なさい。子供は寝る時間だ」父のその言葉を聞いてから時計を確認する。時計の針は夜の8時を指していた。
(俺は小学生か!) 彼は思わず叫びそうになったがそれを言うのを止めた。
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