卒業式

古畑 時雄

第1話 卒業式

 寒さが続くはずのこの季節、例年に無い暖冬により、北の大地は雪不足に見舞われている。


 タケシの住む札幌もそれは例外ではない。何時もなら「雪まつり」で賑わう大通り公園であるが、雪像の数が少なく感じるのだ。


 そんな風景や観光客を尻目に、僕は大学受験に備え学校へと足早に向かった。そうタケシは、札幌市内の高校に通う高校三年生だ。

 

 全国的に行われる大学センター試験も今年が最後で、僕は何としても現役合格する必要があった。それは勿論、来年からの入試制度の変更もあるのだが、浪人するとひとつ下の妹と同じ受験生と言う事が大きい。


 また僕の進みたい大学は、道内にある大学では無いと言う理由もあった。そんな僕が将来目指しているのが建築士である。


 僕の両親は僕が進学するにあたり、何かと口を挟んでは、道内の大学や専門学校に進んで、将来は家業の農業を継ぐよう言いつけてくる。


 しかし僕は自分の進路を両親の意向で決められるのに反発して、子供の頃から憧れていた建築士を目指し、そして温かい家庭と言う物を夢見ていたのかも知れない。


 そんな僕は今年の受験が最初で最後になる。もし受験に失敗したら、親の指示に従い家業を継ぐ約束をしていたからだ。


つづく…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る