準備中
1.―0歳―属性検定は、突然に
私には、前世の記憶がある。
それも、一つや二つではない。
幾度と無く、転生を繰り返してきたのだ。
あるときは魔女として、またあるときは人間として、聖女として、女神として――――
それらの記憶が今回に限っては全て有る。
これは、幾度と無く転生を繰り返していても、無かった事だ。
これが、正常なのか、異常なのかは、今はまだ判断がつけられない。
けれど、今までに無い事だから、何かしらの意味を成しているに違いないと、思う。
だから私は、それが何なのかわかるまで、大人しく世界を見守ることにしよう。
私が生まれた、アレハインド王国のファルファーレン公爵家は、元々は侯爵家だった。
何代か前に王家の姫君が、降嫁なされた事で、格上げされた新参の公爵家だ。
それでも、内政面、軍事面でも、そこそこ重要な役職に就くことも多い家柄なので、蔑ろにされることはまず無い。
私と産まれたばかりのアデレードとは、今の所、同一の意識と言える状態では無いようだ。
丁度、部屋の真ん中をガラスの板で仕切られた様な状態で、お互いを見ることは出来るが思考の干渉までは出来ないようだ。
なので赤子のアデレードは、泣きたいときにはちゃんと泣く。
現在アデレードは赤子で、そう対した思考活動は行っていない。
いずれこの意識も、彼女の成長と共に統合されるか消滅でもするのか……それすらも今はまだ………不明だ。
彼女は赤子らしく、一日の大半を眠って過ごすか泣いているか機嫌よく何かを喋ったりしている。
なので私は、彼女が成長する前に身の回りの安全を確保しておこうと思う。
この世界には、魔法と言うものが存在する。
そして、瘴気と言うものが存在する。
瘴気と言う物が、何処から発生しているのかは分からないが、霧のように空気中を漂い人の体をも害する。何の防護策もしなければ、人の生活圏にまで侵入してくる。
そしてこの瘴気は、濃くなる程魔物を凶暴化させたり、繁殖率をあげたりする。厄介なことに、凝ると魔物を産むのだ。
濃くなった瘴気や凝りは、聖属性の強い魔法でなければ、打ち消すことが出来ない。
そして、『聖属性』を持つものは、大抵この気配に敏感になる。
生暖かく、ねっとりとした気持ちの悪い空気、うっすらと腐臭の様な臭いが立ち込めている。
そして見た目には、うっすらと薄紫色の霞みが掛かっている様に見える。これが強くなると、濃さを増し、色が変わる。
私の前世の中にも、『聖女』は、居る。
なので、彼女の力を使わせてもらおう。
周囲に、分からない程度の魔力を解放していく。
サァーッと、辺りから瘴気の影が消えていき、穏やかな午後の風を運んでくれた。
『ま、出来て当然よね』
それにしても―――
どうして、今回に限っては、全部覚えているのかしら?
今までなら、全く覚えていないかあっても一つか、多くて三つだったのよね。
なのに、どうしてそれが今回に限っては、全開通状態なのか……………。
……………本当に、何で?
◇◇◇◇
ある日の昼下がり、何時ものようにアデレードは昼寝をしていた。
不意に周囲が騒がしい気がして、重たい瞼をうっすらと開く。
まだ良くは見えない目では有るけれど、ぼんやりと魔法使いの様な格好の人間が見えた。
一人二人ではない。複数人居るようだった。
ぐるりとベッドの回りを人間の壁が取り囲んでいた。
一人の男が、アデレードのおでこに水晶を当て何事か呟く。
すると、水晶は、ピカーッと光り、その中に何かの文字が浮かんでいた。
「せ、聖女だ……全属性の………」
――――は?今、何と仰いました???
私の疑問を他所に、周囲の大人達がどよめきたつ。
「「「オォー!!!!」」」
「聖女!……この国にも、
「全属性……全属だって………!?」
――え?聖女?何で分かるの!?え?え?ええぇぇ―
「う、う、うわぁぁふあぁぁぁん!!」
あんまり周りで騒ぐ物だから、アデレードが驚いて泣き出してしまった。
――――あー、もう!ちょっと!!泣いちゃったじゃない!!どうしてくれるよの!!
それにしても、聖女………?
私が、聖女だって!?
冗談でしょ?……何でか分かるのよ!!
嫌よ!聖女なんて、早死にコースまっしぐらじゃない!
まだまだあの世になんて、行きたくないのに!!
……これは、この先何とか誤魔化さないと先々が大変だわ!!
赤子のアデレードに訪れた突然の魔力検定。ソレにより全属性持ちの聖女だと言うことが、早くも発覚しちゃった!!?
本来なら、魔力検定と言うものをは、5歳と、10歳の時に行うらしいんだけど……。
どうしてこんなにも早く行われたのかは分からないけど、正式なものとなる5歳の検定までには、どうにかこの事実を覆す方法を見つけないと『アデレード』が、守れないじゃん!!
だから、当分の間の私の目標は、5歳の魔力検定までに、全属性持ちの聖女だと言う事実を覆す方法を探し出すことだ!!
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