（新）運営のミスでVRMMOで最強になる

第2話 キャラメイク

気が付くと白い空間に立っていた。

　目の前には黄色い半透明のシステムウィンドウが浮かんでいる。そこには自分とそっくりの立体ホロが左端に写っていた。これって僕のゲーム内での分身、「アバター」ってやつか？

　辺りをキョロキョロと見回していると、ポンッという音と共に、目の前にミニサイズの羽を持った天使が現れる。光輪と天使の羽根、そしてスク水を着た女の子だ。三頭身のミニキャラみたいなナリをしている。

　この女の子は確か公式ガイドキャラクターのルミアさんとかいうキャラだったか。

『【マジック＆ソードクエスト】へようこそなのですわ。　まずは貴方の分身となるアバターを設定して下さいですわ。　わからないことがあれば、なんでも聞いて下さいですわ！』

　すごいな。本当に生きているみたいだ。テレビで言ってたけど、最新のAIってここまできてるのか。

　ルミアさんの指示に従って、そのキャラメイクとやらを進めていく。えーっと、名前はリクト……じゃまずいのかな。

　基本、VRゲームでは、アバターの名前と容姿はなるべく変化させることを推奨しているという。リアルの名前、リアルの顔ではゲーム中で何かトラブルに巻き込まれた場合、リアルでもその被害に合うことも考えられるからだそうだ。

　そういや確かリアルネームリアルアバターでプレイしていた女性が、VRゲームで知り合った男にストーカー被害を受けたなんて事件がニュースであったな。

　強制ではないけれど、ちょっとは変えておこう。

　プレイヤーネームは「リク」でいいか。捻りがないけど、まあいいや。

　性別は変えられるけど、もしリアルの友達にあった時とかに変な目で見られるのは嫌だしな。それに名前は「リク」にしちゃってるし、まぁ男でいいよな。

　容姿は……自分の顔をベースにして、用意されたパーツから選んだり、細かく設定することができるのか。

　うーん、ゲームの中だけ男前になっても虚しいし、あっちでリアルの友達と会ったときイケメンだったらなんか恥ずかしいぞ……目とか髪型をいじるだけでいいよね。ちょっとだけ目元がキリッとなって髪型が少し変わった気がする。

　髪は紫がいいな。昔お婆ちゃんに占ってもらった人生のカラーが紫だったから。いやでも薄めの紫はマズい。濃いめのやつにしとくかな。目の色はあまり変えず黒ににしとくかな。

　それ以外は髪型を少し変えた程度で終わらせた。ベースが自分なので、さほど変わってもいない気もするが、あまり変えすぎてもね。とりあえず進めよう。

　さて所属地選択だが……。

【炎天使】ウリエル　固有特性：【無敵】

【水天使】ラファエル　固有特性：【復活】

【木天使】ミカエル　固有特性：【早熟】

【光天使】ガブリエル　固有特性：【蘇生】

【闇天使】ルシファー　固有特性：【堕天】

　うむむ、悩むな。【水天使ラファエル】の固有特性【復活】とか惹かれるんだけど……。

　【炎天使ウリエル】とか【闇天使ルシファー】は、固有特性が特化され過ぎているから却下。

　【木天使ミカエル】これは初心者にはオススメってテレビや雑誌でも言ってるし。それに固有特性【早熟】は、他の種と比べて強くなるのが早いらしい。始めたばっかで無一文で始めるよりは早く強くなりたいしな。これは魅力的な固有特性だな。

　【光天使ガブリエル】のはお決まりって感じがしてどうもなあ。固有特性の【蘇生】は戦闘で一回だけ死んだ仲間を生き返らせる、か。【水天使ラファエル】に少し似てるな。

　ルミアさんにもいろいろと種族のメリット、デメリットを聞いて参考にする。

　うーん……やっぱり【木天使ミカエル】にするか。能力的にはあまりとんがってないのでつまらないけど、自分自身初心者だしな。【光天使ガブリエル】の【蘇生】も捨てがたいんだが、クセのない種族の方がいろいろとできそうな気がするし。素人考えだけど。

　それに種族スキル【早熟】ってのも使えるんじゃないかな。

　「あらゆるスキルの熟練度が多少早く上昇する」ってのは、かなりありがたいと思うんだ。他種族より成長が早いってことだろ。

　よし、種族は【木天使ミカエル】で決定。

　種族を選択すると、目の前の僕のアバターの頭の上に薄緑の光輪が乗っかった。どうやら種族が違くてもあまり身体変化はしないらしいな。

『次は初期武器と初期スキルを決めるのですわ！』

　なるほど、次はとスキルの取得か。

　固有特性【早熟】は、すでにスキルとしてスロットに埋まっている。全部で十つだから残りは9つか。

　初期スキルと呼ばれるものがズラリとリストに並んでいる。うわあ。この中から選ぶのか？　これも悩むな……。

『ちなみにそのリストに載っている武器、スキルはゲーム中、後からでも比較的容易に入手可能ですわ！　ですから気楽に選ぶといいですわ！』

　あ、そうなの？　じゃあ深く考えずに……ってそうもいかんよな。一応は考えないと。入手可能＝確実に手に入るってわけじゃないんだし。

　まずはなんの武器を使うかでスキルも変わってくるよな。

　えーっと簡易な武器は、剣、斧、槍、弓、棍棒、杖、短剣、手甲か。

「ルミアさん、手甲ってのは？」

『殴り武器ですわ』

　格闘家とかが装備するようなグローブか。

　伯父さんとの稽古で慣れてるし、無手も悪くはないんけど……。

　剣はレベルを上げれば両手に二本装備できるのか。それも捨てがたい……うーむ、どうするか。

『初期武器も店で買えますから、今は適当に気に入ったものでもいいと思いますわ。でもでも、「剣」を選んでおいて、スキルが【弓術の心得（Lv1）】を取るとかは無駄ですのでオススメしませんわ』

　確かに。んー、じゃあとりあえず剣にしとこうかね。ってことは、初期スキルのひとつは【剣術の心得（Lv1）】で決まりだな。

　【剣術の心得（Lv1）】ではまだ両手が塞がって盾を装備できないから、相手の攻撃をなるべく躱す方向でいくとなると、素早さを重視だよな。えーっと……【敏捷度UP（Lv1）】と【紙一重（Lv1）】かな。

　あとは敵に不意打ちされないように【気配察知（Lv1）】と、自分で回復アイテムを作れるように【調合（Lv1）】、あとは……あ、【鑑定（Lv1）】があると便利かな。あとは、【脚力上昇】とかも面白そうだな。それから、【探究心Lv1】とかも。【体力UP（Lv1）】あれ、もう一杯か。　【筋力UP（Lv1）】も欲しかったけど……ま、あとで手に入るならいいか。

　種族によっては能力値が足りないために、習得できないスキルもあるらしい。【木天使ミカエル】は平均的なのでそういった心配はないらしい。

■リク　レベル１

【木天使ミカエル】

■称号

【始まりの若者】

■装備

・武器

　木の剣

木の盾

・防具

　皮の服（上下）

　皮の靴

・アクセサリー　

　なし

■使用スキル（10/10）

【早熟】【剣術の心得（Lv1）】

【敏捷度UP（Lv1）】

【紙一重（Lv1）】【気配察知（Lv1）】

【調合（Lv1）】【鑑定（Lv1）】

【跳躍上昇（Lv1）】【探究心（Lv1）】

【体力UP（Lv1）】

■予備スキル（0/10）

なし

■アイテムボックス（1/30）

【ポーション（緑）】×10

■所持金

1000Ｇ

　よし、こんな感じでいいか。しかし、初期装備だけあって「木」とか「皮」ってつくのが多いなあ。なるべく早くお金を稼いで買い換えたいもんだ。

　よし、とりあえずこれで決定っと。

『最後に【神座】を決めて下さいですわ。これは一度決めると後々まで変更できないので、気をつけて選ぶですわ。開始エリアもこれで決まるので注意が必要ですわよ』

　ルミアさんがそう言うと、目の前に空中に浮かんだマップが現れた。

　海に浮かぶひとつの大陸。その大陸の中央部には空白地帯があって、それをぐるりと囲むように五つの領国が色別に存在していた。

　それぞれ【火の神】【水の神】【木の神】【光の神】【闇の神】と書かれていて、それが点滅している。この中から選ぶわけか。

　テレビで取り上げてた種族関係なく遊べる「開始エリア」ってのはこれかな？　開始エリアによって出てくる敵や町が違うらしい。ひょっとして攻略しやすいエリアもあるのかもしれないな。

　取り立ててこだわりもないので、迷うことなく僕は種族と同じ【木の神】を選ぶ。その瞬間、巨大樹のような紋章エンブレムが浮かび上がり、僕のキャラデータの背景に、まるでハンコを押すようにプリントされた。

　その後、『【木の神】の開始エリアに決定しました。キャラメイクを終了します』というメッセージが流れる。

　これでキャラメイクは終了か。

　そのあと軽くチュートリアルを受けて、いろんな設定やバトル方法、スキルの使い方などを教わった。そして、そのチュートリアルも無事終了。いよいよ「エデン」へと向かう。

『「エデン」に旅立つ前に、ひとつお願いですの。「エデン」にはプレイヤーの皆さんだけではなく、様々なNPCが暮らしてますわ』

「あの、えぬぴーしー、って何？」

『ノン・プレイヤー・キャラクター。ゲームにおけるプレイヤーの管理下にないキャラクターのことですの。「エデン」においては、このNPCも生きているということを忘れないでほしいですの。楽しければ笑い、悲しければ泣く。どうか別世界の隣人程度でいいので接して下さいですわ』

「うん、まあよくわからないけど、そうするよ」

　要は普通に接しろってことだよね。なら難しいことじゃない。

『では「エデン」へ行ってらっしゃいですの。困ったことがあればいつでもお呼び下さいですわ！』

「ありがとう。じゃ、行ってくるよ」

　眩い光が辺りを包み、視界がさらに真っ白になっていく。ログインしたときと同じような感覚がして、僕は再び意識を失った。