328,突撃!! 私が晩ごはん!!

「わああああああ!」


 実家の最寄りバス停に降り立ち、満天の星がきらめく畦道を歩いていると、近くの木から見知らぬツキノワグマが降りてきて私のほうへ駆け寄ってきた。差し迫る危機、明確な殺意!


 突撃!! 私が晩ごはん!! ルックルックこんばんは!!


 特殊能力もなければ生身で戦って勝てるほどの強さも持ち合わせていない私は一目散に走って実家へ駆け込んだ。施錠してあったので、早く、しかも正確に解錠して、比喩でもなく言葉のまま食べられそうな身をスライドさせ速やかに家に入る。やや抵抗のある扉を力いっぱい閉めて施錠するとガン! と衝撃音。こういったことが何度もある。


「おやおや未来ちゃん、おかえりなさい。お父さんもお母さんも仕事でいないけど、お風呂沸いてるよ」


 息を切らしていると居間からばあちゃんが出てきて私を迎えてくれた。


 私もばあちゃんもクマは慣れっこで、孫の命の危機に慌てる様子はない。互いに今日までどうにかこうにか生き抜いてきた猛者。


「ただいま。ありがとう、さっそく入るね」


「ふ〜う」


 実家のお風呂、久しぶり。


 無添加の固形石鹸、リーズナブルな家族シャンプーとコンディショナー。淡い暖色の灯りに包まれる浴室。脚は辛うじて伸ばせるけれど大船おおふなのマンションよりは少し小さなバスタブ。


 浴槽内で気絶しつつのんびり湯浴みを済ませ居間に戻るとばあちゃんの姿はなかった。23時過ぎ、もう就寝したのだろう。私も水を飲んで歯磨きを済ませた後、早々に自室にこもってベッドに寝転んだ。窓を開けず外の様子を覗うと、玄関付近を黒い影が徘徊していた。

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