第105話 生存者を発見しました
扉を開くと上に続く階段があった。その先には真四角の開き扉。大きさは大人が屈んで通れるくらいだろうか。
その前に来て廉哉が何かを思い出すように顔をしかめて見つめる。
「あっ、これは、もしかしたら祭壇の下かもしれません」
「へえ。まさしく隠し通路の入り口っぽいな。教会の方にも作るか」
「いいですね。でも、あそこは出口の設定が難しいので、地下に避難所を作ってみますか?」
「そりゃあいい」
呑気に話してはいるが、声は落としている。そして、二人とも扉の向こう側の気配を読んでいた。
目を合わせて頷き合う。
「いくぞ」
「はい」
そっと開けると、そこは瓦礫の山だった。よくこの扉が塞がれなかったものだ。ちょうど落ちてきた
「下手に退かせたりすると上から崩れるな……」
「そうですね……代わりに支えられる何かを用意できればいいんですが」
「あ~、なるほど……いけるかもしれん」
「え?」
宗徳は、空間収納から一本の枝を取り出した。
「それは?」
「こういう枯れた土地でも育ちやすそうな木を探しててな。町の中で一番多く自生してたのを後で調べようと思って拾っといたんだ」
そうして、宗徳はそれを地面に置くと魔術を展開する。
「しっかり根を張ってからだな」
魔術はイメージと現象の理屈を考えられればなんとかなるというのが宗徳の自論だ。
よって、普通は考えないようなことも出来てしまう。
「うそ……っ」
枝はピンっと立って成長し、地面に根を下ろす。ぐんぐん太く大きくなって伸びていく。それが天井に付くと、今度は横に枝を伸ばして天井を支える。
「レン、邪魔な瓦礫、どうにかできるか?」
「あっ、はいっ」
呆然とそれらを見ているしかなかった廉哉は、これで正気に戻り、瓦礫を指定して一気に砂へと変えていく。その砂を、今度は徨流が水で固めて粘土にして四角いブロックへ変えていた。
「おっ、徨流、頭いいなっ」
「徨流、ありがとう」
《くきゅっ♪》
廉哉にも礼を言われてご満悦な徨流だ。
そうしてようやくこの場の全容が見えてきた。
見つけた神官っぽいのと魔術師ぽいのを確認していく。ほとんどは既に息をしていなかった。それらは端の方に並べてやる。
宗徳達が運ぶのではなく、伸びきった枝がまるで触手のように動いて運ぶようにした。大きな白い布でそちら側を仕切り、遺体を見えないようにもしている。
息のある者は反対側へ集めて、治療を施していく。意識はないが恐らく大丈夫だろう。ただ、暴れられてもいけないので、足には木の枝が絡んでいる。
その間、廉哉と徨流は美希鷹達の捜索と部屋の瓦礫除去を進めていった。
「宗徳さんっ、居ましたっ」
それを聞いて走ると、瓦礫と瓦礫の間から三人と一匹の姿が見えた。
すぐに廉哉が上の安全を確認してから瓦礫を砂に変える。
「……レン?」
呆然と焦点の定まらない少し疲弊した様子だった美希鷹が、ゆるゆると頭を上げて廉哉を見る。
「そうだよ。待たせてごめんね。怪我は?」
「ない……助かった……のか?」
「うん。それより、律紀さんは大丈夫?」
「あっ、そうだっ、律紀っ、治季っ」
二人は美希鷹の後ろで気絶していた。
《ふう……》
美希鷹と廉哉が律紀達を揺り起こしている間、キュリアートがようやくというように結界を解いて息をついた。
「キュア、大丈夫か?」
《うん……スッゴイ疲れたー》
「よく頑張ったなぁ。どっかおかしい所はないか?」
羽を広げたり首を振ったりして体の状態を確かめるキュリアート。
《ないみたい。召喚じゃなくて転移っぽかったし》
「その違いってのが分からんが……鷹達も怪我とかはしてねえんだな?」
《してないわ。ただ、ここの空気に慣れるのに少し疲れるかもしれないけど……魔素が結構多いもの。正規の通路を通ってるわけでもないから》
「あ~、俺らみたいに歳とか変わってねえもんな……」
宗徳もようやくこの頃、こちらとあちらの違いが、分かってきたところだ。
宗徳や寿子がこちらに来る時に若返るのは、この世界の環境に適応するためだ。廉哉はこちらで体を作り直されているのでそのままだが、美希鷹達にもそういう変化がないのはよくない。
《体の周りに結界張れる? もう私は限界……》
「おう。無理すんな。やってみる」
魔素を遮断するように、防護服をイメージして美希鷹達を一人一人包むように結界を張る。
すると、律紀と治季が目を覚ました。
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読んでくださりありがとうございます◎
無事で良かった。
また明日です。
よろしくお願いします◎
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