mission 9 東大陸の調査
第084話 正式に所属が決まりました
次の日。
廉哉を連れて宗徳と寿子はライトクエストに出勤していた。
「良いのか? また数日向こうに行くんだぞ?」
門の部屋に向かいながら、宗徳は廉哉に確認する。
せっかく数年ぶりに戻ってきたのだ。こちらに残ってゆっくりしても構わないだろう。ライトクエストの最上階の部屋で滞在することもできるし、美希鷹とも仲良くなったため、一人になることはない。
宗徳と寿子も、廉哉が残るというのならば、交代で戻ってきても良いと思っていたのだ。
「良いんです。それに、悠遠達も寂しがっていると思いますから」
「まぁそうだな……けど、無理すんなよ」
「はい。何より、こうして帰れるということが知れただけで満足ですし」
「そうか」
廉哉は、数日前よりも遥かに良い顔をするようになった。耐えていなくてはならないという無理に作っていた表情がなくなったようだ。肩の力も抜けて、一気に前向きな少年になった。
「ふふ。今の廉君。初めてあちらに行く時のあなたみたいな顔をしているわ」
「どんな顔だよ」
「子どもらしいってことです」
「俺子どもじゃねぇじゃん……」
肩を落として微妙な顔をする宗徳に、寿子はクスクスと笑いながら答える。
「『男は少年の心を忘れねぇもんだ』って言ってたのは誰ですか? 昔からよく聞きましたけど」
それかと頷く。
「おう。若ぇ時の心は忘れてねぇぞっ」
「その顔ですよ」
「ん?」
隣で聞いていた廉哉も肩を震わせて笑っているが、よく分からなかった。
そこにチェルシャーノがやってくる。
「オヤオヤ、微笑ましい家族って感じダネぇ。イラッシャ~い。もういいのカナ」
廉哉と寿子へ目を向けると頷きが返ってくる。それを確認し、宗徳が答えた。
「お願いします」
「ハイハ~イ。では、行ってらっしゃ~い」
そうして、三人で門をくぐった。
◆◆◆◆◆
門が繋がるのは善治の部屋のある天守閣風に作った最上階の一室だ。
「戻ったか。イズ様の用も済ませられたか?」
イザリに言われていたことをしっかりこなせたかと真っ先に聞かれて苦笑する。
「そんな子どものお使い後みたいに言われんの不思議な気分だ。できました」
先ほども寿子に子どものようだと言われていたので、少しむくれてみせる。これに善治は苦笑で返した。
「仕方ないだろう。あの方が関わるのは世界にとって重要なことが多い。これからも何かあれば協力するようにな」
魔女の中でもイザリは上の地位にいるらしい。世界の均衡を保ったりする重要な仕事もあるそうだ。
そんなイザリは、あまり人を頼らない。自分でなんでもできてしまうからだ。特定の個人との付き合いもほとんどないらしいのだが、なぜか宗徳と寿子は気に入っていた。とはいえ、そんな特別扱いに宗徳たちは気付いていない。
イザリを昔から知る者達にとっては、かなり珍しいと二度見したくなる状況なのだ。
「おう。イズ様が困ってたら協力するつもりだぜ」
「私もです」
そこで、廉哉が宗徳と寿子を見比べていることに気付く。
「なんだ、レン。どうした?」
「あ、いえ……こっちの姿の方が違和感がないなって思ってました……」
「私達のこと? そうねぇ、向こうでも気は若いままになってるかもしれないわね」
廉哉には、宗徳達の本来の姿の方が不思議に思えるようだ。
「何年かしたら、善じぃみたいに若くなっちまうらしいしな」
「え、そうなんですか!?」
そういえば話していなかったかもしれない。
「なんか、こっちに来ることで肉体が活性化するらしくてな。そういや、その場合廉哉はどうなんだ?」
廉哉もこうしてこちら側とを行き来することになったのだ。確認しておかなければと宗徳と寿子は善治へ目を向ける。
「本来ならば同じように肉体が活性化されるが、廉哉はこちらで肉体を再構成されているからな。肉体の最盛期を探るように成長がこの辺りからゆっくりになるだろう」
「あ、なら問題ないです」
「そう?」
「けど、年とらねぇかもしんねぇんだぞ?」
廉哉は納得顔だが、宗徳と寿子はそうはいかない。息子がこの先困ることにならないかという将来を心配するのは親の務めだ。
だが、二人は一つ忘れていた。
「僕はあちらでも数十年は年を取らないと言われましたし」
「あ……」
「そういえば検査しましたね……」
「はい。なので、あまり状況は変わらないかと」
そのようだ。
「君はこのまま二人について行くということでいいのか? 所属も同じになるが」
「お願いします」
「わかった。君はこちらで数年過ごした。地理的にも頼りにできそうだ」
「はい」
こうして、正式に廉哉のこの場での採用が決まった。
「早速だが、宗徳と廉哉で行ってもらいたい所がある。廉哉、君には辛いかもしれんが、召喚された国についての情報が欲しい。召喚を以降行えないようにブロックをかける必要があるのだ」
廉哉のような者を二度と出さないために、それは必要なことだった。
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読んでくださりありがとうございます◎
同じことが起きないようにしたいですね。
次話どうぞ!
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