4.メロンソーダ

僕は、人の過去を覗くことができる。


覗きたい人が眠っていて、すぐそばで自分も眠っている時に。

僕が覗いている時、夢の中でその人の人生がもう一度同じように進む。

赤ん坊から寝ている今、まで。


小さい頃、隣で寝ている母親の人生を見た。

薄々勘づいていたけれど幸せそうとはとても言えなかった。

朝起きると母は泣いていた。

幼いながらに

これはいけない力だ、

大切な人も自分も傷ついてしまう、と感じとった。

次の日から僕は1人で寝た。

幼稚園のお昼寝の時間もずっと起きていた。

修学旅行や家族旅行でも大人に無理を言って1人で寝た。


彼女なんて作らなかったしできなかった。

それでも彼女は僕を愛してくれた。

一目惚れをしたと古びたカフェで話かけてきた。

僕も彼女を愛した。

信じてもらえないと思って力のことを話すと

彼女は真剣に話を聞いていた。

僕に向き合ってくれた。

直感的だけど僕は彼女を愛していいのだと思った。



彼女は今、暗闇の中を歩いている。

その背中を追って僕も歩く。

彼女の足取りは重そうに見えるけど

僕がうしろで同じように歩くことで彼女を少しだけ後押しできるような気がして。


もうちょっと、もうちょっとだよ。



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