第254話 再三言うが妹とは血は繋がっていない
「ただいまー.....って誰も居ないか」
「可愛い妹が居ますよ」
「うおっ?!」
お、おま、うちに来るなら事前に言えよ。
天気は晴れ。雲一つ無い快晴なのだが、少しぽかぽかするくらいで相変わらず寒い。日中は10度を越したが、夜になるとぐっと冷え込むとのこと。
平日金曜日の今日はもう学校から帰宅し、後は余暇を過ごすだけだったのだが、唯一の憩いの間は可愛い妹によって占拠されてしまった。
「お前なぁ.....」
「合鍵ってこういったサプライズに向いていますよね」
「俺からパクった鍵返せ」
「嫌です。誕プレなんですから」
お前が勝手に決めただけだろ。
ちなみに去年のクリスマスでの一件で千沙はその合鍵を利用して俺を騙した。その際に俺は合鍵を回収したので、元の持ち主に渡ったのだが、その後千沙が泣きついてきたのでやむを得ずまた渡してしまったのだ。
それをこんな不法侵入紛いなことに使われるなんてな。
「そんな無防備で俺んちに来たら犯されると思わない?」
「一方的な行為は嫌いですので通報します。防犯ブザーで」
防犯ブザー持っているJK初めて知った。
くそ。コン〇ームは某ショッピングサイトで定期便購入しているから溜まる一方だ。
だから消費が追い付かない。というか、そもそも‟消費”が始まらない。
「ちなみにこの防犯ブザーは私が改造した特殊な防犯グッズです」
「機能は?」
「
じゃあ間違って引っこ抜いちゃったら終わりじゃん。なにその仕様。
こいつ、地味にガード堅いよな。俺のピンを千沙の穴に突っ込んだら静かになるのかな。駄目だ、駄目だ。こんなんじゃまたレイプになっちまう。
「ということで、変な気は起こさないように」
「なにしに来たのさ」
「ゲームですよッ!! いつも通りのッ!!」
そんなことで怒鳴られた俺は仕方なく千沙の我儘に付き合うことにした。
千沙の気持ちはわかっても相も変わらずこうしていつものようにゲームをしないといけない。憂鬱のようで、若干の充実感も感じてしまう。JKとゲームなんて望んでもできることじゃないしな。
そんなこんなで俺らは二人でゲームをすることになった。やっているゲームは某ゾンビゲームのシリーズ5である。
「ほんっとこいつ、ジ〇ン・モー〇ンみたいですよねー」
「わかる。モ〇ハンやっている気分だわ」
「背中に乗れたらいいのに」
「ピッケルじゃなくてピストルしかないよ」
テレビの前で二人並んでやっているのだが、俺はこの形を望んでいない。
じゃあ何を望んでいるのかって?
膝枕だよッ!!
「私あまり好きじゃないんですよね。4はすっごく面白かったのに」
「へー」
以前、千沙が俺の“彼女予約”みたいなこと言うから変に意識しちゃってる自分が居るよ。俺、どうやって膝枕してもらってたっけ。
もう自然にJKの太ももに飛びつけないや。
いや、犯罪じみた言い方になるけど。
「ラスボスに至っては戸〇呂弟ですよ」
「なんだ、不満ばっかじゃないか」
「.....不満なら兄さんにもあります」
「え?」
「きょ、今日も膝枕してほしくないんですか?」
「.....。」
お前もかい。
くそ。あっちは俺の頭を太ももに載せたがってたのか。でも、どうやって頭を乗せればいい?!
「よ、よし、じゃあやるぞ!」
「え、ええ」
「.....タオル敷くか?」
「い、いえ。そのままで」
「な、‟生”でいいのか?」
「ちょ! なんでそういうこと言うんですか!」
だって今日の千沙は制服姿で来てるから生足じゃん!!
耳とか頬に太ももが直接当たっちゃうじゃん!!
「いつも通り頭を置けばよくありません?!」
「で、でも、いつもと違って‟ほんまもん”じゃん」
「‟ほんまもん”って言わないでください!」
ゲームを中断し、お互い向かい合って兄妹喧嘩が始まった。
「ええー。もう勘弁してよ。こっちだって男子高校生なんだから考慮してくれない?」
「わ、私だって勇気を振り絞って誘ったんですよ?!」
「もっと違う方を誘ってほしかった」
「んな?! なんでそんなに下心むき出しなんですか!」
「え、別に下心じゃないんですけど。ゲームの話なんですけど。なに勘違いしてるんですかぁ?」
「しらばっくれるのもいい加減にしてください! 無理があります! 兄さんのことだから大体エッチなことでしょう?!」
「というか、兄がそんな変態野郎だとわかってるくせに、なんで際どいことするの?」
「そ、それはなんというか」
「生殺しが繰り返される兄の身にもなって?」
「う、うぅ」
「ってことで、お互いのためにもやめよ?」
「じゃ、じゃあ間を取って―――」
そう言って千沙は胡坐をかいている俺の太ももに、横になって頭を乗せてきた。
お前にとって膝枕ってなんなん.....。どこをどう取って俺が膝枕しなきゃなんねーんだよ。
「ちょっと」
「も、もうちょっと足下げられません?」
「ざ、座布団とかお前の下に敷けば少しはマシになるだろ」
「そう.....ですね」
そこら辺から使っていない座布団を集めた千沙はちょっと横になれるくらいに座布団を何枚か並べて寝そべった。
「「.....。」」
なんか、普段のと逆だから違和感しか感じないな。
胡坐をかいている俺の太ももに千沙は頭を置いているから、別に息子と濃厚接触していないので興奮しない。
「な、なぜにそこまでして近寄ってくんの?」
「.....。」
「ち、千沙さん?」
「.....もっと夢中にさせるためです」
え、何に?
「私の魅力はきっと外見だけでしょう?」
「ま、まぁ、うん」
「ちょっとは否定してくださいよ!」
「じ、自覚あるなら突っかかってくるなよ.....」
こいつは一体なにがしたいんだ.....。
「こうして兄さんとくっついていればもっと好かれるかなって」
「.....。」
これで襲っちゃいけないとか、むしろこいつが犯罪者だよね。無意識でも誘った側は罪だよ。
「はぁ。んなことしなくてもちゃんと好きだぞ」
「え?!」
「妹として、だけど」
「.....。」
千沙が一瞬目を見開いてこっちを見上げてくるが、俺の二言目で虚ろな眼差しへと化した。
「都合がいいときに‟兄妹”を演じますね」
「妹譲りの我儘だからね」
「うっわ。確信犯と見なして防犯ブザー鳴らしますよ?」
すんな。その手に持った防犯ブザー仕舞え。こんなアパートで鳴らされたらシャレにならんわ。
「まぁ、でも、素直じゃない所は本当の兄妹のような感じがします」
「俺は素直な方だぞ。エッチしたい」
「ほんっと兄さんは外見しか見てませんよねー」
そう言った千沙の顔は呆れ顔だ。だって千沙の中身はアレじゃん。性格と外見でプラマイゼロみたいなもんじゃん。ごめんね?
俺の太ももから頭を退かさない千沙は、器用にもゲームを続けるため、再びコントローラーを手に取った。俺もこれに合わせてもう一つのコントローラーを手にした。
「次は?」
「D〇Aです」
「おけ」
ああー、千沙は結局のところどうなんだろ。俺ばっかり意識しちゃってるよ。
あ、これが恋か。
.....いや、さっきも千沙に言われたように俺は外見でしか千沙に魅力を感じていないんだ。自分で言っといてなんだけど、かなり最低な方なんじゃないだろうか。
「兄さんのキャラは?」
「ヒ〇ミ」
「いっつも女キャラですよね」
「目の保養」
よし、一つ確かめてみよう。
「千沙」
「?」
俺は視線を下に落として、未だ俺に頭を預けている千沙を見つめた。
千沙のことが本当に好きかどうかなんてこの一言ではっきりするんだし。
「俺と付き合ってください」
「嫌ですよ。面倒くさい」
ふむ。びっくりするくらいなんとも無かったぞマイハート。それでいいんか。
「「はぁ」」
ため息ぴったりな兄妹は以外にも血は繋がっていないのである。
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