第108話


 帰りの電車に乗るときは、もう日暮れ近かった。


車窓から夕日を見ながら電車に揺られた。


澄子さんの苗字は水原だった。


これは偶然なのだろうか?


しかし俺にはそういう風には思えなかった。


何かわかりそうでわからないじれったい気持ちになった。


「おっ!あった!水原工務店。電話番号も載ってるぞ!」


類がスマホで検索してくれていた。


「けっこう大きな会社だね。乃海、良かったじゃん。これでじーちゃんの頼みは果たせそうだね。」


旭が言った。


そうだ。確かにこれでじーちゃんからの頼みは無事解決しそうだ。


だけど何故なんだろう。


俺の心はどこか不安で波風が立っているようだった。




 地元の駅について、三人と別れた。家に帰ると両親はすでに帰宅していた。


「乃海、おかえり!」


父と母が俺に言った。


俺はしばし父の顔をじっと見た。父は何だ? と首をかしげた。


「父さん、ばーちゃんがししゃもだらけの弁当を作ったこと根に持ってたけど、許してあげて…。そして、ししゃも旨いから食わず嫌いやめて…。」


俺はそのまま自分の部屋へと階段を登っていった。


父は何故今それを? という顔をして俺を見つめていた。


「乃海はどうしたんだ?」


父は母に尋ねた。


「思春期なんでしょ。確かにあなた、ししゃもは美味しいわよ!」


父は首をかしげていた。


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