第二七〇食 ヘタレ男子と缶チューハイ①
★
一方その頃、うたたねハイツ二〇六号室では――
「――ふーん、なるほどねえ。勢いだったとはいえ、ようやく
「……ああ、そうだな」
いつもはお日様のような笑顔を浮かべる少女が座しているはずのそこに居たのは、彼の友人であるイケメン女子大生だ。
「ぷはっ! うえぇ、やっぱり久々に飲むとすんごい甘いね、チューハイって……あ、このイカ美味しいよ、食べるかい?」
「いや、いらない……というかさ」
一度言葉を
「なんで
「え、今さら? なんでって……
「だからって新年早々人の部屋で酒盛りするか普通!?」
「いいじゃん別に」
「どうせキミ飲まないんでしょ?」と悪びれもせずに言った
「そんで、なんの話だったっけ? あ、そうだそうだ、酔った真昼ちゃんに押し倒された夕がとうとう我慢できなくなって、溜まりに溜まった情欲を無抵抗な少女の
「そんな話をした覚えはねえ」
「い、痛いなあ、なにも叩くことないじゃんか!? ……ちなみにどうだったんだい、押し付けられた真昼ちゃんのカラダは? 私の見立てによるとあの子は今B寄りのCくらいだよね?」
「だからなんの話だよ! 『だよね?』じゃねえよ知らねえよ!」
「いや待って?
「いい加減にしろ、このボケッ!」
本人たちの居ないところで――居るところでされても困るが――失礼きわまりない推測&嘆息をする蒼生の顔面に夕が射出した座布団が
「でも真面目な話、キミが理性的なヒトで良かったよ。これが普通の男だったら間違いなく真昼ちゃんに手出してたね。いやー、流石だよ夕! よっ、ヘタレ野郎!」
「誰がヘタレ野郎だ! そんな最低な真似、俺じゃなくたってするわけねえだろ!」
「いや、
「……」
大学祭の時、真昼を連れて歩いていただけで血涙を流しながら掴みかかってきた男たちの姿が
「まあそういう意味だとキミが手を出さなかったのはやっぱり偉いよね。夕だって真昼ちゃん以外にはほんとにモテないもんね、いやガチで」
「その通りだけどわざわざ強調すんなよ、腹立つなお前」
「春先の飲み会終わりに女の子たちが『誰が格好良かった?』って話題で盛り上がってたことがあったけど、夕の名前なんて
「うるさいんだよ、余計なお世話だ! つーかその話する必要まったくなかっただろ!」
「そんなに怒んないでよ、褒めてあげてるんだからさ。……ふう、よくあんな可愛い子から
「今ぼそっと『つまんない』って言っただろ!」
年が明けても変わらない調子の蒼生にピキピキと
「そこまでいったのに、なんで文化祭の時の決着をつけなかったのさ?」
「ぐっ……」
先ほどまでのおふざけモードとは違い、その瞳には今度こそ真剣な――夕の気持ちを確かめるかのような色が
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