第一四二食 友人たちとベタな展開
★
「……意外だったわ」
「んー? なにがー?」
体育の授業でペアになったひよりからぼそりと呟くようにそう言われた
「いや……
「あははー、ひどい言われようー」
「でも、今日はちゃんと
「んー、まーねー……よいしょ、っと!」
担ぎ手側を交代し、亜紀は背中合わせになっているひよりをぐぐっと
「っていうかこー見えても私、まひるんとおにーさんのことはけっこー本気で応援してるつもりだよー?」
「それは嘘だ」
「まさかの即答ー?」
「だってアンタと
「あははー、それくらいは許してよー。まひるんはちょーっとからかっただけでも真っ赤になってくれるから楽しいんだー。ほんと
「どういう意味、よっ!」
「あだだだだだっ!? い、
青筋を浮かべたひよりに力いっぱい引き上げられ、足をばたばた振り回しながら悲鳴を上げる亜紀。
「げほっ、げほっ……ち、ちょっとはパワーセーブしてよねひよりーん。ただでさえ同じ
「今度は背骨が折れるまでいってみようか?」
「スミマセンでした」
「……やっぱり意外だわ。アンタに友だちの恋を応援するような、真っ当な人間の考えが出来ただなんて」
「失敬だなー。私だって人並みに恋の応援くらいするよー」
するとグラウンドの上で
「――〝ただ気になってるだけ〟か〝真剣な恋〟なのかくらい、私にだって分かるよ。それが大切な友だちの恋だっていうなら……応援してあげたくもなるよ」
「アキ……」
珍しく真面目な顔で微笑む亜紀の横顔に、ひよりは感じ入ったかのように瞳を揺らし――
「――でもそう言う割にアンタ、
「あははー、まー別に女の子同士でもカップルになれないわけじゃないですしー」
「アンタって子は……」
とはいえ雪穂とどこかのイケメン女子大生についてはひよりもただ静観しているだけなので、亜紀ばかりを責めるわけにもいかない。いや、もっと言えば話がややこしくなったそもそもの原因はあの女子大生本人にあるのだが。
「
「まひるん、おにーさんとのことどーするつもりなんだろうねー? 今朝ケンカして出てきちゃったんでしょー?」
「ん……喧嘩したというよりはあの子が一方的に飛び出してきただけだけど」
「あははー、おにーさんニブいからなー。『ま、真昼はなんで怒ったんだ……?』とか思ってそー」
「まあ実際、あの人からしたらなんでひまが怒ったのかなんて分からないわよ。あの子、自分の気持ちもハッキリしないまま『気付いてほしい』って言ったようなものなんだし」
「ひよりんって、一見まひるんのこと甘やかしてるようで案外キビシーよねー」
「別に……手放しで肯定してあげることだけが優しさじゃないでしょ。最終的にあの子のためにならないんだから」
「お母さんかよー」
「う、うるさいわね……」
けらけらと笑う亜紀から照れたように目を背けるひよりだった。
「……どうすると言えばさー、そろそろ文化祭の出し物も決めないとだよねー。今日のホームルームで決めるとか聞いたけどー」
「文化祭、ね……」
「あははー、学校の二大
「文化祭自体が嫌なんじゃないわよ。ただこの学校の文化祭って、一年生は慣例的に屋台か教室展示でしょ?」
「あー……たしか体育館は二、三年生が使うから、劇とかバンドは事実上不可なんだっけー? イマドキあんまりないよねー、こういう露骨な年功序列ってー」
屋台や出店は祭りの華だが、実際に自分たちが出店するというのは凄まじく面倒くさいものだ。食材の品質管理の徹底や食中毒への
かといって教室で手芸教室を開いたり、やる気のない書道作品の展示会をするというのもいただけない。やはりそこは人生で一度しかない高一の文化祭、思い出に残るような〝なにか〟をしたいのだ。
「あ、
「? なによそれ?」
「知らないのー? 毎年、後夜祭でキャンプファイヤー囲みながらフォークダンス踊るんだよー。しかも噂によると、そこでペアで踊った男女はなんと――」
「あーはいはい、〝ペアで踊ると恋が
「あははー、ベッタベタだよねー。でも私はそういうの嫌いじゃないけどなー」
「アンタは当日大変そうね……」
男子人気なら真昼すら
「(そういえば、
脳裏に浮かぶのは今朝、迷いが抜けたような
「(……変に吹っ切れちゃって、『後夜祭でお兄さんと一緒に踊るっ!』とか言い出さなきゃいいけど……)」
でも
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