プロローグ ダンジョン旅
平凡な少年ヤン・ラクスには夢がある。それは一攫千金を狙ってダンジョンを旅をしながら強くなる事である。家族に言うと、絶対に反対されることがわかっているので、書き置きを残して家を出る事にした。
「まだ太陽が昇ったばっかりだし、誰にも気付かれないよね?特に妹達に気付かれると面倒だし」
ラクスは誰も起こさないように、忍び足で玄関に移動した。しかし、靴を履こうとすると、背後から視線を感じる。ラクスが振り向くと、双子の妹であるシャルラとエシスが天井に立っていた。言葉の意味通り、天井と地上が逆さになってしまったかのような錯覚に陥ってしまう。
「…あれれ?お兄ちゃん、そんな荷物を持ってどこに行くのかな?まさか夜這いじゃないよね?」
エシスは、有無を言わさぬ態度でラクスを問い詰める。
「友達の家に泊まりに行くんだよ」
「お兄ちゃんは友達がいないよね?どこに行くのかな?まさかテルさんの家じゃないよね?ど・こ・い・く・の・か・な?」
シャルラはラクスに追い討ちをかける。ラクスは耐えきれなくなって目を逸らし、正直に話すことにした。
「僕は旅に出ようと思う、ダンジョンを旅して僕は強くなりたいんだ。そして僕は英雄となり、この村を救いたい」
「へっ!旅?冗談でしょ?英雄願望はその歳だと恥ずかしいよ!もしかしてお兄ちゃん、まだあのこと気にしてるの?」
「私とシャルラ、それとテレサさんが、王子様の側室にならないかって言われたけど、私もシャルラも好きな人がいるし、テレサさんだって…。村には断ったペナルティーとして徴収が高くなったけど…」
「村に盗賊を装って、シルやシャルラ、エシスを攫いに、兵隊が何度か来てたのを僕は知ってる。強くならなきゃいけないんだ。母さんと父さんには黙っててくれ。じゃあ、僕は行くから、またな」
双子の姉妹は顔を見合せ、お互いに頷き合った。妹達はラクスを追いかける為、旅路の準備を始めた。ラクスは村の外に出るため歩いた。村の外への出口には幼馴染みのテレサ・シルが立っていた。
「こんな早くに何してるの?」
僕はダンジョンを旅することを話すと
「わかった、私も付いていく、準備するからちょっと待ってて」
「連れて行くわけにはいかないよ」
しかし、シルは有無言わさぬ迫力で
「決定」
と言う。僕はあまりの迫力に圧され
「はい、わかりました」
と口にしていた。シルの準備が整い、村を出た。目指すは貿易都市クラント。僕のダンジョン旅が始まった。
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