第8話 女神



 彼女には気をつけな

 女神のような女なのさ



 北に孤独な男がいれば

 胸に抱いてあたため

 南に文無しの男がいれば

 浮世を忘れる歌をうたう


  虹の羽衣ふわふわりと


 西に迷子の男がいれば

 するっと手を取り 闇から光へ

 東に絶望する男がいれば

 夜が明けるまで背中をさする


 天使の歌声 

 聖母の微笑み 

 奇跡の肢体


 高根の花が惜しみなく


 我が子のように

 乳のように

 蜜のように

 愛を 愛を 愛を 愛を


 そりゃあ 男は有頂天さ


 天上の香りに包まれて

 あっという間にジャンキーさ



 だけど

 ジーザス!!

 女神の子どもはおまえだけじゃないぜ



 今日もどこかで

 凍えた男が泣いている


 彼女の耳に

  ほら 

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