第3話 闇猫


その穴は

深くて 冷たくて


君まで光が届かない


君を呼ぶ

みんなの声も

僕の声も

反響するばかりのノイズになってしまう




君の様子が視えなくて

怖いんだ

心配なんだよ


冥い冥い闇の底で

君が盲いてしまっていないか


君の脚が

冷たい水につかっていないか


君が 

痩せて 痩せて

飢えた猫のようになってしまっていないか



出ておいで

あたためてあげるから

出ておいで

責めないから




すこしづつ人々が去ってゆき

君を待ち続けるのは

僕ひとりになってしまったよ


出てきておくれ

寒いんだ

出てきておくれ

淋しすぎる



・・・声が、反響する・・・・




穴の底にいるのは

君か

僕か


君の声をくれ

君の光を



ミャウミャウミャウミャウ


哭いているのは

誰だ

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