第29話
爺さんは目を開いた。
「わしらが封印した魔王は、後十年も経たないうちに封印が解かれる……」
俺とウェンディは言葉が出なかった。
話が終わってから少し経ち、気になった事を聞いた。
「爺さん、魔王ってのはどれぐらい強かったんだ?」
「全盛期の爺さん達が勝てなかったってことはかなり強いのか?」
爺さんは深く頷いた。
「うむ……人間のわしらと違って、魔力の量や魔法の威力が桁違いじゃった」
「魔法を簡単に跳ね返し、わしの武術でさえノーダメージじゃった」
「さらには、魔王に[四天魔臣]といった最強の部下達がいる」
名前を聞いただけでも強そうな名前だな。
だけど、少し興味が湧いた。
いつかそいつらと戦ってみたい。
すると爺さんは立ち上がり、無言で俺をじっくりと見る。
「な…なんだよ、俺に何か付いてるのか?」
「いや……お主、わしと修行していた時よりもかなりの修行を積んだのぉ」
「まぁな! 今の俺なら爺さん相手に組み手をしても一本を取れる!」
ウェンディは笑いながら言った。
「それはないわよ! ビリー様が同じ武闘家に負けるとは思えないわ!」
爺さんは首を傾げる。
「どうじゃろうな、本当に一本を取られるかもしれん」
ウェンディは立ち上がって俺の方を見る。
「テリー、私と組み手をしよう! 貴方の実力を見てみたいわ!」
俺は立ち上がり、考える事なく即答した。
「わかった、組み手をしようじゃないか! 爺さんの弟子同士、戦おう!」
俺とウェンディは小屋を出る。
少し遅れて、爺さんも小屋を出てきた。
「お主らは、わしの大切な弟子じゃ! じゃが、お主らが戦っているところを見てみたい!」
俺がどれだけ強くなったのか、爺さんに見せるいい機会だ。
「ウェンディ! 手加減はしねぇぞ?」
ウェンディは爺さんと同じ構えをして言った。
「手加減なんていらないわ! 全力でかかって来なさい!」
俺も爺さんやウェンディと同じ構えをする。
爺さんが、組み手開始の合図をした。
「お互いに全力で戦うのじゃ! 組み手を開始させる……始めぃ!!」
ウェンディは組み手開始いきなり、一気に詰めてきた。
「マーシャル流・[回転かかと落とし]!」
地上の相手にジャンプして、縦に回転して叩きつけるように蹴り下ろす技だ。
腕をクロスし、かかと落としを受け止める。
ウェンディはさらに横に回転し、逆足で蹴りを繰り出した。
両腕はかかと落としで使えないから膝でガードする。
「いい蹴りだ! 流石は爺さんの弟子だな!」
ウェンディは笑顔で応える。
「テリーもビリー様の弟子でしょ! テリーも攻撃してきなさい!」
確かに受け止めてるだけじゃ、話にならない。
「わかった、今度は俺から行くぞ!」
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