第21話

 剣士は相変わらず、盾で俺の攻撃を全てガードする。


 グレイスと魔法使いはもう一度、極大魔法の詠唱をしている。


 俺の[無形発勁]は何度も使える技ではない。次の極大魔法を放たれてしまうとかなり厳しい状況だ。


 剣士との戦いを早めに終わらせて、極大魔法の詠唱を阻止しなければならない。


 だが、剣士はなかなか倒れてくれそうにない。


 連携の取れていないパーティなら一人でも余裕があった。


 しかし、[ブレイカーズ]のように連携が取れているパーティは相当、厳しい。


 俺もパーティならもう少しは楽なんだろうけど……。


 とにかく今は、剣士を倒すことに集中をしよう。


 攻撃を繰り返しているうちに、剣士に疲れてきていた。


「グレイス、極大魔法はまだか!?」


 剣士は辛そうな表情を浮かべる。


「あと少しよ! あと少し、耐えて!」


「わかったが、出来るだけ早く頼むぞ! もう耐えれそうにない!」


 剣士が疲れているのは、俺が攻撃の速度を少しずつ速くしているからだ。


 同じ速度の攻撃をしても、身体がその速度に慣れてしまう。


 だが、少しずつ攻撃を速くしたらその速度についていく為に体力を使ってしまうのだ。


 盾の同じ箇所で攻撃を受けていたので、盾にヒビが入ってきた。


 一気に攻めるなら、今しかない!


「剣士の兄ちゃん、そろそろ終わらせるぞ!」


 片腕に一気に力を注ぐ。


「[一刹七唱]! 空手流・[鉄槌打ち]」


 盾に入ったヒビを狙った。


 剣士は盾で受け止めようとするが、盾を粉砕し剣士の鎧もヒビが入る。


 [鉄槌打ち]は硬いものを攻撃する時に有効な技で、盾相手にはもってこいの技だ。


 剣士は壊れた盾を見て驚いた。


「な……なんだと!? 俺の盾を貫通して鎧まで攻撃するとは……」


「驚いてる場合じゃないぞ! まだ盾を壊しただけだ!」


「空手流・[三日月蹴り]」


 次は鎧のヒビが入った箇所を狙って、[三日月蹴り]で

鎧を壊し、剣士の身体に直撃した。


 剣士は後方に勢いよく飛んでいき、闘技場の壁にぶつかって気絶した。


 歓声が湧き上がる。


「武闘家の兄ちゃん、武闘家に続いて、剣士まで倒したぞ!」


「盾を拳で砕くなんて……、何者なんだ!?」


 剣士を倒し、一息つく。


「ふぅ……、ようやく剣士を倒せたか」


 グレイスは歓声に負けない声で叫ぶ。


「まだ試合は終わってないわ!」


 そうだった……まだ試合は終わってなかった。


「テリー! 今度こそ極大魔法で倒してみせるわ!」


 剣士が倒れたのと同時にグレイス達の極大魔法の詠唱が終わっていた。


 一度目よりもさらに大きい魔法陣が展開されていた。


 あまりの大きさに、運営の魔法使いは闘技場全体に魔法障壁を貼った。観客に被害が出ない為だ。


「これが、私とアルスの魔力を全て使用した極大魔法よ!」


 もう一人の魔法使いはグレイスに全ての魔力を渡したみたいだ。


 それにしても、大き過ぎる。


 今度ばかりは本当に終わったかもしれない……。

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