第3話
捨てられて死を待つようになってから二年が経った。
俺はやはり死ぬのが怖くて、森の中にある木の実を食べてどうにか生きていた。
こんな生活を二年間もしていると森を熟知していた。木の実の場所やまだ5歳の俺でも狩ることができる動物の場所もわかってきた。
そんなある日、森の中で1人のお爺さんと出会った。この森で住み始めてから初めて人間に出会った。
老人は急に意識を失い、倒れた。
「爺さん、大丈夫か!?」
「爺さん……じーさん……」
俺は急いで生活拠点まで運んで、木の実を調合した薬を飲ませた。右足も怪我をしていたので薬を塗っておいた。
その日は起きることはなかったが、翌日になると目を覚ました。
「爺さん、目が覚めたか!」
「具合はどうだ?」
爺さんは身体を起こして言った。
「あ……あぁ、助かったわい」
「あのまま誰も助けてくれなかったらわしは死んでいたかもしれんのぉ」
俺は久しぶりに人間と会話をできたので嬉しかった。
「そうか……無事ならよかった」
爺さんは旅の途中に獣に襲われて、右足に怪我をして意識がなくなったみたいだ。
「お主はこの森で、何をしているのじゃ?」
あまり思い出したくなかったが、人と会話をするのは久しぶりだったので口が滑ってしまった。
「親にこの森に捨てられた……もう二年間はこの森で生活をしている」
爺さんは申し訳なさそうに言った。
「そうか……それは残酷な話じゃのう」
「いいよ、もう親がいないのには慣れたから」
嘘だ。本当は誰かと一緒にいたい。
「お主はまだ子供なのに心が強いのう」
「助けられた恩がある……何か、わしにできることがあれば言ってくれ」
俺は捨てられてから色々考えた。
どうしたらこの世界で魔法使い以外で強くなれるかを……。
ダメ元だけど爺さんに言ってみることにした。
「俺には魔力がないから魔法が使えない。そんな俺でも強くなれるなら強くなりたい……」
爺さんは真剣な顔で答える。
「わしもお主と一緒で、魔力がなくて魔法使いにはなれなかったが、魔法使いに負けるとは思っておらんぞ」
「わしの職業は[武闘家]じゃ。世間的には最弱の職業じゃ」
俺は疑問だった。最弱の職業の[武闘家]が何故、最強の職業の魔法使いに負けない?
「魔力の量は産まれた時点で決まっているから強くなるのにも限界がある」
「だが、[武闘家]は身体を鍛えるだけで強くなれる。魔法の攻撃よりも早く動けるまで鍛えればいいんじゃ」
「お主には恩がある。わしはもう歳で現役ではないが、3年間だけじゃがお主に[武闘家]としての闘い方を教えてやろう」
俺は嬉しかった。魔法が使えなくても強くなれる方法を知れたし、目標ができた。[武闘家]になって、修行を積んで魔法使いよりも強くなってやる。
「爺さん……俺を強くしてくれ!」
「俺は魔法使いに負けない世界最強の[武闘家]になる!」
そして、俺と爺さんの修行が始まった。
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