ザワツキの理由

 転校生が来るそうだ。

 ホームルームが始まるまで、クラスはその話で盛り上がっていた。

「ねぇねぇ、どんな子かなぁ」

「朝、先生が男子だって言ってた!」

「かっこいいかな」

「なんか知ってる?」

「噂によると、涙袋が大きいらしいわよ」

「なにそれ! 可愛い系男子じゃん!」

 先生が教室に入ってきて、クラスは静まり返った。先生が話し出す。

「みんな知ってると思いますが、転校生が来ました。では、入ってきて下さい」

 先生がそう言うとドアが開き、転校生の彼が教室に入ってきた。

 クラスはザワツキ始め、彼は教卓の横に立って教室をぐるっと見渡した。


 彼は噂通り、たしかに涙袋が大きかった。だが、決して可愛い系男子ではなかった。

 両目の下にはしっかりと大きな涙袋があるのだ。その涙袋は果たして涙袋と呼ぶべきものなのか。それは「涙袋」とペンで書かれているゴミ袋だった。

 後で彼が言っていたのだが、彼は涙脆いそうで、多いときには牛のよだれ並みに涙が出るとのことだったので、僕も納得した。

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