第50話 イベント その3


 変な人に絡まれて疲れちゃったな……いつのまにか暗くなってきてるし、少し休憩しよう……近くにあったひときわ大きな木の根元に入れそうなスペースがあったのでその穴へ……穴の中はもっとジメッとしてるかと思ったけどそんなことないし、フィット感ハンパない。昼寝とかしたら気持ち良さそう……


 「ここ、なんか落ち着くなー」


 バーバラさんのサンドイッチやクッキーを食べつつのんびり……もぐもぐ。飲み物が水しかないのが残念。


 「あー、はちみつ持ってきたらはちみつ水が作れたじゃないかー」


 がっくり……もぐもぐ、ごくり。


 一応、休憩中と他のプレイヤーやモンスターには気をつけて気配察知と隠密を並行して頑張ったよ。若干ビクビクしちゃったのは仕方ないよね……


 「あー、美味しかったー……あれ?もう真っ暗じゃん……ランプとか持ってくればよかったよー……ま、持ってないんだけどさー」


 いままで夜に街の外で行動したことなかったからランプの存在すっかり忘れてたんだよね。


 「あ!そうだ、火打ち石で火ってつけられるんじゃなかったっけ?」


 でも、火打ち石だけあっても意味ないんだよね?確かなんか鉄的なやつで火打ち石を擦るってテレビでやってたような……うーん。


 「あっ!投擲ナイフでいっか!」


 ごそごそと穴から這い出て、近くにあった葉っぱや細い木の枝を集めていく。

 とりあえずダメ元で火打ち石と投擲ナイフをカチッ、カチッと擦ってみると無事?に火花が出た!


 「おっ、これならいけるかもー!」


 初心者用投擲ナイフって耐久∞だし、切れ味とか悪くならないから便利だよね?なんでみんな使わないんだろ……

 何気に初心者装備ってすごいと思うんだけどなー。今度、ベルたちに聞いてみよ。いらなかったら初心者装備売ってほしいって。もしかして、販売所とかで売ってるのかな?投擲ナイフは何本あってもいいし、イベント終わったらチェックしてみよう。


 「よーし、火花が出ることが確認できたしこれを燃やさないとね!」


 とりあえず木の枝をナイフで細かく削ったものを用意してみた。いきなり葉っぱや枝を燃やすのは難しいかなーって思ってさ。

 これ、だいぶ時間かかったよ……投擲ナイフじゃなかなかに大変な作業だった。だって何回か指切りそうになったし、暗くてよく見えないし……うん、暗い中でやることじゃなかった。

 今度、ランプと一緒に普通のナイフも探してみなくちゃ。


 「ふぅ、結構木くずがたまってきたぞ!うーん、これぐらいでいいのかなー?てか、もう手元が見えないからこれ増やすのは無理なんだけど……」


ピコン!

 〈スキル:木工が取得可能になりました〉


 「わーい!新しいスキルだー……はっ!このスキル上げたら、わたしが案山子さんの腕とか体とかいろいろと作れるようになるんじゃ……」


 わくわく……


 「あー……スキルポイントが足りないんだったー」


 がっくり……うん、今度ポイント手に入れたらゲットしよう。そうしよう。


 気持ちを切り替え、乾いた葉っぱの上に木くずを置き、火花が飛ぶようにセッティングしてみる。


 カチッ、カチッ……カチッ、カチッ……カチッ、カチッ、カチッ……ボッ


 「おおー、ついたー!」


 ほんとは枝だって乾いてないとパチパチ弾けて危ないとか聞くし、火打ち石だって簡単にはいかないらしいけど……あら、不思議。何回か挑戦したら火がつきましたよ……うん、ゲームだからだね。きっとそうに違いない。じゃなきゃわたしが火をおこす天才ってことになっちゃうもんねー。ちなみに火をおこすので1番時間かかったのが枝を削る作業でしたよー。


 とりあえず、火が消えないように枝を足して……火が見える付近でクリスタル探してみよー、おー!


 「まずはこのお世話?になってる木からだね」


 よいしょっと……


 全体重かけて木を揺らしてみる……何か落ちてこないかなー?あ、モンスターがいないのは確認済みだよ?……多分。


 ゆさゆさ……


 「いてっ……」


 何かが頭にクリーンヒットした!

 あ、いてっ……とかいってるけど、痛覚設定のおかげでほんとは全然痛くないんだよね。条件反射で思わず声出ちゃったんだー……念のため頭を触ってチェックしたけど、たんこぶとかもできてないみたい。


 「ってか、今のでHPの残りがあとちょっとしかないじゃん!」


 うわー、HPってこんな簡単に減っちゃうんだ……気をつけないと。

 

 「これさ、こないだベルに聞いてステータスポイントを振り分けてなかったら確実に死に戻ってたやつだねー」


 さて、わたしのHPを減らした犯人は……キョロキョロ……あっ!クリスタルでしたー!わーい!

 そういえば、頭に当たったもの以外にもぼとぼとっていくつか落ちた音がした気が……木の周りを探してみると


 「おー、クリスタル!おーっ!こっちはコアじゃん!なんてラッキーなのだ!まさにこれが不労所得(違う)」


 いそいそと拾い集めアイテムボックスへ……


 調子に乗って周辺の木を揺すってみたけど落ちて来るのは葉っぱや枝ばかりだった。そして、ことごとく体に当たる……回復しては減っていくHP。うん、ついてない。

 でも、ひとつだけくるみの木があったんですよー!ほとんど落ちてるのを拾った(揺らしてもなかなか落ちなかったともいう)けど、中にはまだ実のまま落ちてたのもあったからブーツで踏んで中を取り出したよ。うん、普段見てるくるみって種?だったんだね……この姿を見つけてなきゃ気付かずに通り過ぎてたよね。

 しっかり地図に地点登録しておいたけど、イベント終了後にも使えるのかなー?ま、いっか!使えたらラッキーってことで!

 

 「くるみはいざとなれば投擲すれば武器として使えるし、よかったよかった!」


 イベントが終わったらバーバラさんに献上して美味しく仕上げてもらおーっと。くるみパン……くるみクッキー……くるみのパウンドケーキ……じゅるり。


 「あ、よだれが。でもこれじゃ全部作ってもらうには足りないんじゃ……」


 思わずもう1度くるみの木を揺らしてみたけど、新たに手に入ったのはごくわずかだった。


 この辺りの木はほとんど揺らしてみたけど、クリスタルは最初の木からしか見つからなかった。うん、あれがレアなポイントだったんだな、きっと。



 現在の収穫……

 【至誠のクリスタル】×10

 【叡智のクリスタル】×7

 【生命のコア】×5

 【読めない本】×2

 【花瓶】×1

 【綺麗な石】×2

 【木の枝】×11

 【くるみ】×42

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