第9話 初クエスト その1


 朝ご飯を食べてトイレをすませたら軽くストレッチ、あとはペットボトルを用意してログイン……


 「おはようございます」

 「「おはよう、リリー(ちゃん)」」

 

 グランツさんとバーバラさんはすでにひと仕事済ませていたみたい。ログインした時にはゲーム内時間ですでに丸1日が過ぎていたけど、どうやらその辺りはふたりとも不思議に思ったりしないみたい。よかった。


 「約束ですし、畑のお手伝いしますね!」

 「そうかの?では、まずはギルドへ行って登録を済ませてきておくれ。この手紙を受付に渡せば簡単にすむはずじゃ」


ピコン!

 〈クエストが発生しました。クエストを受けますか?Yes or No 〉


 ウインドウにクエストの詳細が出現した。


*****


 クエスト

 内容:農業ギルドへ行って登録しよう!

 報酬:農地(ひと区画)、作物の種or苗

 期限:今日中


*****


 Yesを選ぶ。


 「わかりましたっ!……で、グランツさん、農業ギルドってどこにあるんでしょうか?」

 「おお、そうじゃったな……リリーにはこれをあげよう。農業ギルドまでの地図じゃ」

 「ありがとうございますっ」

 「農業ギルドには印をつけておいたから迷うことはないはずじゃぞ」


 グランツさんにもらった地図は全体がグレーがかっている。歩いたら自動的に色がつく仕組みらしい。アイテムボックスに入れるとウィンドウにも表示できるみたい。多分、街全体の地図じゃなくて街の地図の拡大図みたいな感じだと思う。


 「ありがとうございます。助かりますっ」

 「気をつけてね」

 「うむ、しっかりな」

 「はい!行ってきます!」


 地図を頼りに歩くどんどん地図に色がついていく……楽しい。地図埋めに夢中になって若干迷子になりかけたけど、グランツさんが印をつけてくれたおかげでなんとかたどり着けた。地図を見過ぎで時々人にぶつかりそうになったのは内緒だよ?


 「おおー、ここが農業ギルドかぁ」


 周りより大きな建物に長靴とクワの看板が掲げてある。うん、わかりやすいね!

 ギルドへはいるとカウンターが目に入る。受付かな?受付にはベテランぽいお姉さんと気弱そうな男の人がいた。空いている方へ進む。


 「すいませーん。ここって受付で合ってます?」

 「はい、そうです」

 「あ、よかった!えっと、登録お願いします。あとこれを見せると簡単に済むって聞いたんですけど……」


 アイテムボックスからグランツさんの手紙を取り出し受付のお姉さんに渡す。


 「……これは……失礼ですが、異界の旅人の方でしょうか?」

 「はい」

 「ギルドカードはお持ちですか?」

 「ギルドカード……持ってないです」

 「わかりました。紹介状があるのでギルドへの登録料が1000Gですね」


 あれ、紹介状だったんだー……


 「はい、これでお願いします……ちなみに紹介状がないとどうなったんですか?」

 「紹介者のランクにもよりますが、通常は登録料に3000Gいただいてます」

 「へー」


 すっごくお得に済んじゃった。グランツさん様々だねー。


 「では、手をこの板に乗せてください」

 「はい」


 手を乗せると板が光った。


 「はい、結構です。お名前はリリー様でよろしいですか?」

 「はい!………ってなんで名前知ってるんですかっ?」

 「先ほど板に手を乗せていただいた時に自動的に読み込まれました。あ、もちろんこれは異界の旅人のみで、わたくしたちはたくさんの申請書類が必要です」


 へー、こんなところにもNPCとの違いがあるんだ……


 「そうだったんですね……」

 「ええ……ですので偽名での登録や同じギルドへの重複登録などはできない仕組みになっているそうです」 

 「へー……」

 「はい、これで登録完了です。こちらはギルドカードになります」

 「ありがとうございますっ」


 渡されたギルドカードはよくあるポイントカードと同じサイズで半透明なカードだ。見る角度によって色が違う。


 「リリー様はFランクスタートとなります。これはギルドでのクエストや貢献度などでランクアップが可能です。ランクアップすれば買える種や苗の種類が増えたり、品質の高い農具などが買えるようになります」

 「おおー」

 「このカードは他のギルドでも使えますので無くさないよう気をつけてくださいね……紛失した場合は再発行にお金がかかります。それとこのギルドカードを使ってギルドへお金を預けたり引き出すことも可能です。他の街のギルドでも使えますし、本人以外出し入れはできない仕組みですので安心してくださいね」


 銀行みたいな感じかな?ギルドにお金を預けておけばデスペナに怯えなくていいってことだね!


 「はい!わかりましたっ」

 「カードに触れると氏名、所属ギルドのランクやギルドでのクエスト状況などもわかりますので……クエストはあちらの掲示板にございます。売店はそちらに……買い取りや相談は受付にお願いしますね」

 「はい、ありがとうございます」


 あ、ちなみにギルドカードをアイテムボックスに入れたらウィンドウ上からでも簡単に氏名、所属ギルドのランクが確認できたよ。取り出さなくていいから無くす可能性がグッと下がったね。


 売店は農作業に必要なものに特化してるみたい。ほとんどが農具や種、苗、肥料だった。案山子さんは売ってなかったよ……ランクが上がったら買えるようになるのかな?


 掲示板のクエストはわざわざ受付にいかなくてもその場で受けますか?の選択肢が出現した。全部が農業に関係するクエストだね。できるものがないのでひとまずスルー。

 どうやら、受けますか?のウィンドウが出現するのはプレイヤーだけみたい。NPCっぽい人は受付に紙を持っていってるから……ここでも違いがあるみたいだね。


 「さて、帰るかー……」

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