1 迷い子



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おやおや、こんなところにお客さんとは珍しい。

こんにちは、小さなお客さん。こんなところへ何の御用でしょう?



…ふむ、迷った?そうでしたか…ヒトの子、ですか…

あ、いえいえなんでもありませんよ。ただの独り言です。

しかし困りましたね、私はここを離れるわけにもいかないのですが。まあ、非常事態ということにしておきましょうか。さあ、こちらにいらっしゃい。



え、私の名前ですか?…「とこぬし」で結構ですよ。

しかしこんなところへ迷い込んでしまったとは、君もなかなか不幸ですね。私でなければ命を落としていたかも、なーんて。冗談というものですよ、ふふふ。



ただ、それ以上につらい仕打ちは受けていたかもしれませんがね。

では身の上話はこの辺にして…参りましょうか。

どこにって、それはもちろん親御おやごさんのもとへですよ。私が連れて行ってあげましょう。



さあ、つきましたよ。ここをくぐれば戻れます。

今度は迷わないようにするんですよ、次はありませんからね。

ええ、さようなら。どうかお元気で。








ふう、行きましたか。

しかしこんなこともあるのですね。地主神じぬしがみ神域しんいきに迷い込むなんて。


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