勝手にKACエクストラ🐻 あなたのお題で物語を紡ぐぴょん🐰

10 『天城こえ〜★』お題『演歌』。レイティングなしでございます。

１　幼（おさな）い外見（がいけん）とは裏腹（うらはら）のとんでもない中身（なかみ）

　これは妹（いもうと）の天城辰子（あまじょう たつこ）が高校（こうこう）２年生（ねんせい）だった当時（とうじ）の話（はなし）である。

　俺（おれ）の妹（いもうと）は、少（すこ）し変（か）わっている。いくつか、例（れい）を挙（あ）げてみよう。

①『獣害事件（じゅうがいじけん）好（ず）き』である。

　人（ひと）が動物（どうぶつ）に食（く）われる系（けい）の話（はなし）に、異様（いよう）な興味（きょうみ）と関心（かんしん）を示（しめ）す。ただ幸（さいわ）いなことに、と言（い）って良（い）いのかどうかわからないが、『人（ひと）が食（く）われるのが面白（おもしろ）い』と思（おも）っている訳（わけ）ではないようだ。

　むしろ、もし自分（じぶん）がその食（く）われる立場（たちば）であればどうなるのかについて想（おも）いを馳（は）せては、悦（えつ）に入（い）っているらしい。はっきり言（い）って変態（へんたい）である。

②『強（つよ）い動物（どうぶつ）』に関心（かんしん）がある。

　陸上動物（りくじょうどうぶつ）で最強（さいきょう）は何（なに）か？(銃器（じゅうき）を携（たずさ）えた人（ひと）を除（のぞ）く)

　その手（て）の話題（わだい）が大好（だいす）きである。トラとヒグマが戦（たたか）ったらどちらが強（つよ）いか？　といった話題（わだい）に目（め）がない。妹（いもうと）、辰子（たつこ）の結論（けつろん）として陸上（りくじょう）動物（どうぶつ）最強（さいきょう）はアフリカゾウ。『ライオンもトラもホッキョクグマもヒグマもアフリカゾウ相手（あいて）では分（ぶ）が悪（わる）い』そうである。体重（たいじゅう）が違（ちが）い過（す）ぎて勝負（しょうぶ）にならないそうだ。

③『毒好（どくず）き』である。

　連想（れんそう）する言葉（ことば）を『あ』から『わ』まで書（か）き出（だ）してもらったことがある。

　『あ』といえば『アコニチン(トリカブト毒（どく）)』、『い』といえば『石見銀山（いわみぎんざん）鼠取（ねずみと）り(砒素（ひそ）のこと。単（たん）に[石見銀山（いわみぎんざん）]でも同（おな）じ意味（いみ）となる)』といった具合（ぐあい）で、毒（どく）に関（かん）する用語（ようご）が８割（わり）近（ちか）くになるのを知（し）って戦慄（せんりつ）した憶（おぼ）えがある。

④『女子高生（じょしこうせい）にはあるまじき類（たぐい）稀（まれ）なる格闘能力（かくとうのうりょく）』の持（も）ち主（ぬし）である。

　辰子（たつこ）が中学（ちゅうがく）３年（ねん）の頃（ころ）、ロリコンのストーカー男（おとこ）に狙（ねら）われたことがある。

　あまりにも、鬱陶（うっとう）しかったためか、人気（ひとけ）のないところで問（と）い詰（つ）めようとしたところ、拉致（らち）られそうになったのだが……。

　警察署（けいさつしょ）からの連絡（れんらく）を受（う）け、俺（おれ）と母（かあ）さんで迎（むか）えに行（い）ったのだが、驚愕（きょうがく）すべき真実（しんじつ）を知（し）ることになる。

　顔（かお）とか殴（なぐ）られて、アン○ンマンみたいに腫（は）れ上（あ）がって痛々（いたいた）しい妹（いもうと）の姿（すがた）。

　なんでも、相手（あいて）の男（おとこ）は、上背（うわぜい）が185cm、体重（たいじゅう）110kgを超（こ）える大男（おおおとこ）で空手（からて）二段（にだん）というバケモノ。一方（いっぽう）の辰子（たつこ）の方（ほう）はというと、身長（しんちょう）140cm程度（ていど）に体重（たいじゅう）も40kgに満（み）たないちんちくりん体型（たいけい）。よく逃（に）げだせたものだと思（おも）ったが。

　話（はなし）を聞（き）くに、先（さき）に逃（に）げだしたのは男（おとこ）の方（ほう）だったという。肋骨（ろっこつ）の骨（ほね）はバキバキに折（お）られ、腕（うで）の骨（ほね）も折（お）られ、両肩（りょうかた）の関節（かんせつ）は外（はず）され、全身（ぜんしん）打撲（だぼく）の痛々（いたいた）しい状態（じょうたい）。内臓（ないぞう）にもかなりのダメージがあったらしく後日（ごじつ）聞（き）いた話（はなし）では、数日間（すうじつかん）、血（ち）の尿（にょう）が出（で）たという。

　トッププロの格闘家（かくとうか）と『ガチで殺（や）りあっちゃいました★』状態（じょうたい）だという。

　俺（おれ）は常日頃（つねひごろ）から、妹（いもうと）から殴（なぐ）る蹴（け）るの暴行（ぼうこう）を受（う）けていたが、どうやら相当（そうとう）に手加減（てかげん）をしてくれていたらしい。

　後（のち）の妹（いもうと）の特技（とくぎ）は『手刀（しゅとう）でビール瓶（びん）を切（き）る』というもので、飲（の）み会（かい）の席（せき）で披露（ひろう）してはドン引（び）きされていたようだ。

２　そんな妹（いもうと）の元（もと）にも春（はる）が訪（おとず）れた

「ねえ？　お兄（にい）ちゃん？　私（わたし）、好（す）きな人（ひと）が出来（でき）たの……」

　そう告（つ）げられた時（とき）、俺（おれ）は吾（わ）が耳（みみ）を疑（うたが）った。

　そして、次（つぎ）に考（かんが）えたのは、どんな相手（あいて）かということだ。

　身長（しんちょう）２mを超（こ）える熊殺（くまごろ）しの猛者（もさ）か？　あるいは、毒物（どくぶつ）知識（ちしき）に精通（せいつう）した毒殺魔（どくさつま）？　発勁（はっけい）の使（つか）い手（て）である格闘技（かくとうぎ）の達人（たつじん）かもしれん。

　およそ、人類（じんるい）の規格（きかく）から外（はず）れたトンデモ人物（じんぶつ）を想像（そうぞう）したのであるが。

「クラスの男（おとこ）の子（こ）でね、小松多門（こまつ たもん）くんっていうの」

　聞（き）くと、可愛（かわ）イケメンで小動物系（しょうどうぶつけい）の守（まも）ってあげたくなるような男（おとこ）の子（こ）らしい。

　それを聞（き）いて俺（おれ）は別（べつ）の意味（いみ）で動揺（どうよう）してしまった。

　どうやら、マジで普通（ふつう）のクラスメイトに恋（こい）してしまったようなのだ。

　可愛（かわい）い妹（いもうと）がよその男（おとこ）と付（つ）き合（あ）う。それは、イモートスキーアニーには耐（た）え難（がた）い試練（しれん）である。とはいえ、これは妹（いもうと）がまともな人間（にんげん）に落（お）ち着（つ）くチャンスかもしれない。

　俺（おれ）は私情（しじょう）を捨（す）て、力（ちから）を貸（か）すことにした。

３　けしから〜ん！　びりびり

「ねえ、どうしたら良（い）いかな〜？」

「オーソドックスに告白（こくはく）したら良（い）いんじゃないか？」

「そうだよね💡　じゃあ、さっそく果（は）たし状（じょう）を！」

　こらっ！　果（は）たすな、果（は）たすな★

「そこは『ラブレター』だろ💌」

「ラ、ラララララ、ラブレター？　そ、そおだよねっ！　か、書（か）いてくるくるよ🍥」

　真（ま）っ赤（か）に染（そ）まってテンパり過（す）ぎだろ。まったく。

　２時間（じかん）が経過（けいか）した。俺（おれ）は気（き）になって訊（き）いてみることにした。ノックをして妹（いもうと）の部屋（へや）に入（はい）る。

「おう、辰子（たつこ）。さっき言（い）ってたアレ、書（か）けたか？」

「あっ、お兄（にい）ちゃん。こんなところで会（あ）うなんて奇遇（きぐう）だね」

　自宅（じたく）の自室（じしつ）で同居（どうきょ）の兄（あに）に会（あ）って、何（なに）が奇遇（きぐう）なんだ？　そんな珍（めずら）しいシチュエーションじゃないぞ？

「お前（まえ）はちょっとズレてるところがあるからな。俺（おれ）が見（み）て、添削（てんさく）してやろう」

「ロリコンのヒトデナシにディスられた？　でも私（わたし）はそんなことで目（め）くじら立（た）てる女（おんな）の子（こ）じゃないの🐳　でも、見（み）せるの恥（は）ずかしいな♡」

「ラブレターで失敗（しっぱい）したら、上手（うま）くいくものも、上手（うま）くいかなくなるぞ？　いいから見（み）せてみろよ」

　妹（いもうと）は渋々（しぶしぶ）書（か）いた手紙（てがみ）を差（さ）し出（だ）してきた。恥（は）じらう姿（すがた）は恋（こい）する乙女（おとめ）そのもの。あれ、誰（だれ）これ。

「え〜、『やっほ〜。小松多門（こまつ たもん）くん、元気（げんき）ですか？　元気（げんき）があればなんでも……』」

「ちょっとやだ、声（こえ）に出（だ）して読（よ）まないで！」

「おお、悪（わる）い悪（わる）い」

『やっほ〜。小松多門（こまつ たもん）くん、元気（げんき）ですか？　元気（げんき）があればなんでも出来（でき）る！　元気（げんき）を出（だ）してイキましょう。元気（げんき）といえは……(『元気（げんき）』に関（かん）する話題（わだい）がひたすら続（つづ）くが中略（ちゅうりゃく）する)。さて、名残惜（なごりお）しいですが、最後（さいご）の話題（わだい）となってしまいました。私（わたし）、天城辰子（あまじょう たつこ）は、小松多門（こまつ たもん）くん、あなたのことが好（す）きです♡　あなたを奴隷（どれい）にして、写生（しゃせい）官吏（かんり）して、首輪（くびわ）を付（つ）けてペットとして飼（か）いたいと思（おも）います。つきましては、きたる……』

「って、何（なん）だ、これは？　けしから〜ん！」

　びりびり。

「やだっ、お兄（にい）ちゃん、何（なに）するの！」

　完狩（かんしゅ）ネプチューン○ンのクオーラルボンバーを彷彿（ほうふつ）とさせる黄金（おうごん）の左腕（ひだりうで）が、俺（おれ）の首（くび）にヒットした。

　もし妹（いもうと）が本気（ほんき）であれば、俺（おれ）の首（くび）は胴体（どうたい）を離（はな）れ、ろくろっ首（くび）(首（くび）が伸（の）びるタイプではなく、離（はな）れるタイプ)になるか、さもなくば、首（くび）をもぎ取（と）られた無惨（むざん）な惨殺死体（ざんさつしたい）となるところであった。

　苦（くる）しさにごほごほと咳（せ）き込（こ）む。

「なんだよ、この内容（ないよう）は？　恋（こい）する女子高生（じょしこうせい）が書（か）くラブレターの中身（なかみ）じゃねえ。良（い）いか？　ラブレターというものはだな……」

　妹（いもうと）が比較的（ひかくてき）まともなラブレターを完成（かんせい）させるまでには、二週間（にしゅうかん）の時（とき）を要（よう）した。

４　プレゼント大作戦（だいさくせん）だね♪　それなら自信（じしん）ある🎁

　どうやら、告白（こくはく）は無事（ぶじ）成功（せいこう）したようだ。

　しかし、妹（いもうと）の悩（なや）みは尽（つ）きなかった。

　ノックもなしに俺（おれ）の部屋（へや）に入（はい）ってきて、辰子（たつこ）は言（い）う。

「ねえ？　私（わたし）、カノジョらしいこと、なんにもしてあげられてないの？　どうしたら良（い）い？」

「カノジョらしいことってなんだよ？」

　このとき、辰子（たつこ）お嬢様（じょうさま）は純情可憐（じゅんじょうかれん）な女子高生（じょしこうせい）が決（けっ）して口（くち）にしてはならないような、ゲスで爛（ただ）れたおことばを述（の）べられました。レイティングがございますので、詳細（しょうさい）は伏（ふ）せさせて頂（いただ）きます。どうぞご自由（じゆう）にご想像（そうぞう）下（くだ）さいませ。

　正直（しょうじき）、もう面倒（めんど）くさくなってきてたので

「なら、プレゼントをあげてみてはどうだ？」

と、適当（てきとう）なことを言（い）ってお茶（ちゃ）を濁（にご）しておいた。

「プレゼント大作戦（だいさくせん）だね♪　それなら自信（じしん）ある🎁　あっ、そおいえば、お母（かあ）さんがお兄（にい）ちゃんのこと呼（よ）んでたよ？」

「ああ、あのことかな？　行（い）ってくる」

　って、呼（よ）んでなかったじゃーん！

　ピコーン💡

　あんにゃろ、何（なに）か企（たくら）んでやがったな。

　二階（にかい）へと駆（か）け上（あ）がる。俺（おれ）の部屋（へや）に既（すで）に妹（いもうと）はいなかった。辰子（たつこ）の部屋（へや）のドアを乱暴（らんぼう）にノックする。

「おい、開（あ）けろ！　開（あ）けないと、ただじゃおかないぞ！」

　完全（かんぜん）にハッタリである。俺（おれ）と妹（いもうと）がやりあえば、俺（おれ）が100％（ひゃくパーセント）負（ま）ける。100％（ひゃくパー）だ。けれども、辰子（たつこ）は俺（おれ）が本気（ほんき）で怒（おこ）っていることを示（しめ）せば反省（はんせい）して考（かんが）えを改（あらた）めてくれる。完全（かんぜん）な闇落（やみお）ちはしていないのである。

「な、何（なに）？　お兄（にい）ちゃん？　私（わたし）、頭痛（ずつう）が痛（いた）くなってきたから寝（ね）ようかと……」

「プレゼントの用意（ようい）しただろ？　見（み）せてみろ」

「な、何（なに）言（い）って……」

「見（み）・せ・て・み・ろっ！」

　おそらく間違（まちが）いあるまい。辰子（たつこ）がしぶしぶドアを開（あ）ける。辰子（たつこ）の机（つくえ）の上（うえ）には、予想通（よそうどお）りのモノが、いや、予想（よそう）以上（いじょう）のモノがあった。

「あーっ！　お前（まえ）、なんてことを！　人（ひと）のモノを取（と）るのは、泥棒（どろぼう）だぞ！　これは母（かあ）さんに言（い）いつける」

「ま、待（ま）って！　ごめんなさい★」

　部屋（へや）を出（で）ようとしたところで、辰子（たつこ）に縋（すが）りつかれた。

　引（ひ）き止（と）めてくれて助（たす）かった。正直（しょうじき）母（かあ）さんには知（し）られたくなかったからな。

　妹（いもうと）の机（つくえ）の上（うえ）にあったのは、エロースDVD数点（すうてん）。これはまだ良（い）い。問題（もんだい）は、ここからだ。

　中学（ちゅうがく）の頃（ころ）から集（あつ）めてきたエロース本（ぼん）グラビアの厳選（げんせん）ファイル２冊（さつ）。これは文字通（もじどお）り、俺（おれ）の宝物（たからもの）である。それと、もうひとつは家族（かぞく）がいない日（ひ）にひっそりこっそり楽（たの）しもうと思（おも）っていた未使用（みしよう）ＴＥＮＵＧＡ（　テ　　ヌ　　ガ　）。

　母（かあ）さんに知（し）られたら、俺（おれ）も無傷（むきず）ではいられない。けれども、辰子（たつこ）の方（ほう）が遥（はるか）かに罪（つみ）は重（おも）いはずだ。

５　タイトルから予測（よそく）がついた方（かた）もいるでしょうが

　辰子（たつこ）と小松多門（こまつ たもん）くんの付（つ）き合（あ）いは暫（しばら）く続（つづ）いたが、２ヶ月（かげつ）と持（も）たず解消（かいしょう）した。

　直接（ちょくせつ）の引（ひ）き金（がね）となった事件（じけん）はこれだ💥🔫

　ふたりっきりでカラオケに行（い）った折（お）り、辰子（たつこ）が『あなたに捧（ささ）げる曲（きょく）』だと言（い）って歌（うた）ったのである。そう、『天城越（あまぎご）え』を。

　知（し）らない方（かた）のために説明（せつめい）しておくと、

『誰（だれ）かに取（と）られるくらいなら　あなたを殺（ころ）して良（い）いですか？』

なんて歌詞（かし）のある演歌（えんか）である。

　多門（たもん）少年（しょうねん）も、薄々（うすうす）気（き）が付（つ）いていたのだろうな。辰子（たつこ）にヤバい顔（かお）があるということに。

　将棋（しょうぎ）以外（いがい）の趣味（しゅみ）の話（はなし）は絶対（ぜったい）するな！　と、釘（くぎ）を指（さ）しておいたが、何（なに）かの際（さい）にふと、ヤバい嗜好（しこう）が顔（かお）を覗（のぞ）かせたりしていたのであろう。これは想像（そうぞう）だが、たとえば。

『たももんは、何（なに）か動物（どうぶつ）に食（く）われるとしたら何（なに）が良（い）い？』

　とか。

『ねえ、知（し）ってる？　ヤマカガシの毒（どく）はＬＤ値（ち）(半数致死量（はんすうちしりょう）)でいったら、ハブの毒（どく）の10倍（ばい）の強（つよ）さがあるんだよ？』

等（など）といった具合（ぐあい）に。

　薄々（うすうす）、辰子（たつこ）のことをヤバいと感（かん）じつつあったときに、『天城越（あまぎご）え』である。

　浮気（うわき）の疑（うたが）いが掛（か）かった時点（じてん）で毒殺（どくさつ）されると思（おも）ったのかもしれない。兄（あに）の俺（おれ）ですら、『辰子（たつこ）ならやりかねん』と、ちょっと思（おも）っているし。

　で、当（とう）の辰子（たつこ）はというと、さばさばしたもので、ショックを受（う）けている風（ふう）もない。

　まあ、辰子（たつこ）は強（つよ）い者（もの）好（ず）きだから、可愛（かわ）イケメンでは、物足（ものた）りなかったのかもな？