姚興66 姚泓の度量   

白い虹が、太陽にかかった。

ある占い師が、姚興ようこうに言う。


「間もなくよろしくないことが起きます。

 が、すぐにそれは解消されましょう」


この頃、姚興はふたたび体調を崩し、

療養をしていた。

そこに飛び込むのは、姚弼ようひつの仮病。

出仕もせず、自らの屋敷に兵を集めている、

と言うではないか。


この知らせが姚興に届くと、姚興は激怒。

姚弼一派である唐盛とうせい孫玄そんげんを収監し、

まもなく殺した。


すると姚興に対し、姚泓ようおうが言う。


「私めの不徳にて、

 弟を教化できませんでした。

 そのため、やつに不届きな動きを

 取らせてしまったのです。

 これは誠、天に対し、恥ずべきこと。


 父上、もし私の存在が

 国をゆるがせとしておられると

 もしお感じになるのであれば、

 この私を排除くださいませ。

 さすれば国は安まり、そしてこの姚氏も

 安泰となりましょう。


 また、この私に大恩を示され、

 罰をお与えになられないのであれば、

 私を地方の統治官となさって下さい」


実質、ぼくじゃ次代の王は

無理ですよ宣言である。


それを皇太子に言わせてしまった姚興、

げっそりとした顔で、

姚贊ようさん梁喜りょうき尹昭いんしょう斂曼嵬れんまんかい

諮議堂しぎどうに集める。

それで、内密に姚弼捕縛を計画。


この時、姚紹は雍城に駐屯していた。


私が姚弼を捕らえましょうか、と

申し出てきたのだが、数日もの間、

結論を下せずにいた。


この動きは、姚弼サイドにも伝わった。

不穏な動きが見受けられたのだろう。

なので姚興、すぐさま派兵、

姚弼を捕らえ、中曹ちゅうそうに収監した。

そして一派を厳しく糾弾の上、

処刑しようとする。


それを涙ながらに止めてきたものがいた。

姚泓である。

最終的には、そのとりなしによって

姚弼一派の命は救われた。


姚興、梁喜に言っている。


「姚泓は心底優しい子だな。

 猜疑心もそうは抱かんのだろう。

 きっと賢人らを育み、この家を

 よく保つことだろう」


そして、姚弼らの罪は不問とされた。

いや待って!?




時白虹貫日,有術人言於興曰:「將有不祥之事,終當自消。」時興藥動,姚弼稱疾不朝,集兵於第。興聞之怒甚,收其党殿中侍御史唐盛、孫玄等殺之。泓言於興曰:「臣誠不肖,不能訓諧于弟,致弼構造是非,仰慚天日,陛下若以臣為社稷之憂,除臣而國寧,亦家之福也。若垂天性之恩,不忍加臣刑戮者,乞聽臣守籓。」興慘然改容,召姚贊、梁喜、尹昭、斂曼嵬於諮議堂,密謀收弼。時姚紹屯兵雍城,馳遣告之,數日不決。弼黨兇懼。興慮其為變,乃收弼,囚之中曹,窮責黨與,將殺之。泓流涕固請之,乃止。興謂梁喜曰:「泓天心平和,性少猜忌,必能容養群賢,保全吾子。」於是皆赦弼黨。


時に白虹は日を貫き、有る術人は興に言いて曰く:「將に不祥之事有れど、終には當に自ら消えん」と。時に興は藥動し、姚弼は疾を稱し朝ざず、兵を第に集む。興は之を聞きて怒り甚だしく、其の党の殿中侍御史の唐盛、孫玄らを收め、之を殺す。泓は興に言いて曰く:「臣の誠に不肖にして、弟を訓諧す能ずんば、弼に構造の是非を致し、天日を仰ぎて慚づ。陛下の若し臣を以て社稷の憂と為したらば、臣を除きたるは國を寧、亦た家の福なり。若し天性の恩を垂し、臣に刑戮を加うを忍ばざらば、臣に守籓を聽すを乞わん」と。興は慘然と容を改め、姚贊、梁喜、尹昭、斂曼嵬を諮議堂に召じ、密かに弼を收ぜんと謀る。時に姚紹は兵を雍城に屯じ、馳せ遣りて之を告がしめど、數日決さず。弼が黨は兇懼す。興は其の變為るを慮れ、乃ち弼を收め、之を中曹に囚じ、黨與を窮責し、將に之を殺さんとす。泓は流涕し固く之を請わば、乃ち止む。興は梁喜に謂いて曰く:「泓が天心は平和にして、性に猜忌少なし。必ずや能く群賢を容養し、吾が子を保全せん」と。是に於いて弼が黨を皆な赦す。


(晋書118-27_仇隟)




許すのか……(許すのか……)


仏の顔の弾倉が無限すぎてヤバい(ほめてない)

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