姚興60 北魏との和親  

北魏ほくぎから、和親の使者がやってきた。

使者は後秦こうしんと改めて通婚したい、

と申し出てくる。


同時期に北魏との国境付近を守っている

姚成都ようせいと長安ちょうあんにまで出向いてきていた。

姚興、姚成都に尋ねている。


「そなたは東方、

 北魏と接するエリアを守って久しい。

 現地の状況にも通じておろう。


 いま、北魏より通婚要望が来て、

 それを受諾したところなのだ。

 ともなれば、北魏との間で

 分災共患が叶うと考えておる。


 遠方にてはともに向き合い、

 隣り合っては手を携え合う。

 それが叶うかと思うが、

 いかがであろう?」


姚成都は答える。


「北魏は柴壁さいへきで我らを打ち破って後、

 未だ戦力を損耗しておりませぬ。

 その騎兵隊の勢いも盛ん、

 軍備は万全、と言えましょう。


 そんな北魏と婚姻を結べるのであれば、

 分災共患で話は終わらず、

 国に長きの安寧をもたらしましょう」


このコメントに、姚興は歓喜。

さっそく嚴康げんこうを使者に立て、

改めて北魏の使者をねぎらったのち、

多くの贈り物を持たせて出立させた。




時魏遣使聘於興,且請婚。會平陽太守姚成都來朝,興謂之曰:「卿久處東籓,與魏鄰接,應悉彼事形。今來求婚,吾已許之,終能分災共患,遠相接援以不?」成都曰:「魏自柴壁克捷已來,戎甲未曾損失,士馬桓桓,師旅充盛。今修和親,兼婚姻之好,豈但分災共患而已,實亦永安之福也。」興大悅,遣其吏部郎嚴康報聘,並致方物。


時に魏は使聘を興に遣り、且つ婚を請う。平陽太守の姚成都の來朝せるに會し、興は之に謂いて曰く:「卿は久しく東籓に處り、魏と鄰接す。應に彼が事形を悉くとせん。今、婚を求むるの來たりて、吾れ已に之を許さば、終には災を分け患を共にせる能わん。遠きに相じ接し援せるを以いたるや不や?」と。成都は曰く:「魏は柴壁の克捷より已來、戎甲は未だ曾て損失せず、士馬は桓桓にして,師旅は充盛す。今、和親を修し、婚姻の好を兼ぬらば、豈に但だ分災共患なるのみなるや。實に亦た永安の福ならん」と。興は大いに悅び、其の吏部郎の嚴康を遣りて聘に報わしめ、並べて方物を致さしむ。


(晋書118-21_政事)




もう勃勃ぼつぼつは止まらないし、と言うか北魏にとっても勃勃は不倶戴天の敵になってるくさいし、この共通の敵と向かい合うにあたっては重要な同盟でしょうねえ。問題は後秦が中からへし折れそうな状態になってることですが!


北魏としても、後秦なんてあとは勝手にぶっ倒れるし、それなら今は柔然じゅうぜんや勃勃、あるいは東方の宇文うぶん部や高句麗こうくり? にもリソースを割きたいところではあったんでしょう。この段階なら、もはや劉裕りゅうゆうもか。


しっかし思ったより劉裕出てこねえな。まぁここからか。

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