苻堅7  鄴都包囲網   

慕容垂ぼようすいによる包囲を受ける、ぎょう苻丕ふひ

すでに食料も尽き、馬の飼葉もなく、

城内に生える松の木を削って食べる、

という有様になっていた。


ここで丁零ていれい翟遼てきりょうが慕容垂に反旗を翻す。

慕容垂自身が翟遼の対応に出ざるを得ず、

包囲網がゆるくなる。


そこで初めて鄴に、

外部の情報がもたらされた。

聞けば苻睿ふえいらは敗北し、長安ちょうあんがピンチに

さらされているそうではないか。


手をこまねいているわけにも行かない。

苻丕は計画を練る。

苻謨ふも苻亮ふりょう苻定ふてい常山じょうざんに布陣させ、

苻鑒ふかん王兗おうえんには慕容垂の本拠である中山ちゅうざんに。

彼らに呼びかけ、鄴包囲網の打破を狙う。

そのためのメッセンジャーとして、

邵興しょうこうという武将に騎馬隊千を与え、

出発させた。


が、慕容垂が

その事態を想定しないはずがない。

張崇ちょうすうを派遣し、あっさり邵興を捕獲。

襄國じょうこくと鄴とあいだの辺りでのことだ。

このままではまずい、

苻丕、今度は封孚ふうふを西に派遣。

晋陽しんようにいた張蠔ちょうごう王騰おうとうに援軍を要請する。

っが、彼らも自分の城を守るので手一杯。

援軍はもたらされなかった。


これは参った、どうしたものか。

苻丕は部下たちと相談する。

この事態にもなれば、

さすがに降伏を説くものも現れる。

この場合は、副官の楊膺ようようだった。

が、苻丕、この提案にはなかなか乗れない。


そうこう言っているうちに、

晋の軍勢も迫ってくる。

丁匡ていきょう碻磝こうごう郭滿かくまん滑台かつだい

顏肱がんこう劉襲りゅうしゅう黄河こうがを渡り、北岸に。


苻丕は桑據そうきょを迎撃に出させたが、敗北。

晋軍は勝ちに乗じ黎陽れいようまで進撃。

陥落させた。


もはや、進退は極まった。

慕容垂と晋、どちらがマシか。

両者を天秤にかけた結果、

苻丕はいとこの苻就ふしゅうと、

その幹部の焦逵しょうきを派遣。

謝玄しゃげんに救援を求めるのだった。




苻丕在鄴糧竭,馬無草,削松木而食之。會丁零叛慕容垂,垂引師去鄴,始具西問,知苻睿等喪敗,長安危逼,乃遣其陽平太守邵興率騎一千,將北引重合侯苻謨、高邑侯苻亮、阜城侯苻定於常山,固安侯苻鑒、中山太守王兗于中山,以為己援。垂遣將軍張崇要興,獲之于襄國南。又遣其參軍封孚西引張蠔、并州刺史王騰于晉陽,蠔、騰以眾寡不赴。丕進退路窮,乃謀於群僚。司馬楊膺唱歸順之計,丕猶未從。會晉遣濟北太守丁匡據碻磝,濟陽太守郭滿據滑台,將軍顏肱、劉襲次於河北,丕遣將軍桑據距之,為王師所敗。襲等進攻黎陽,克之。丕懼,乃遣從弟就與參軍焦逵請救于謝玄。


苻丕は鄴に在りたるに糧は竭え、馬に草無く、松の木を削りて之を食う。丁零の慕容垂に叛せるに會い、垂は師を引きて鄴を去らば、始めて西が問を具さとし、苻睿らの喪敗し長安に危逼せるを知らば、乃ち其の陽平太守の邵興を遣りて騎一千を率いさしめ、將に北に重合侯の苻謨、高邑侯の苻亮、阜城侯の苻定を常山に、固安侯の苻鑒、中山太守の王兗を中山に引き、以て己が援に為さんとす。垂は將軍の張崇を遣りて興を要え、之を襄國の南にて獲る。又た其の參軍の封孚を遣りて張蠔、并州刺史の王騰を晉陽にて西に引かんとせるも、蠔、騰は眾の寡なきを以て赴かず。丕は進退の路に窮し、乃ち群僚に謀る。司馬の楊膺は歸順の計を唱うるも、丕は猶おも未だ從わず。晉の濟北太守の丁匡を碻磝に、濟陽太守の郭滿を滑台に、將軍の顏肱と劉襲を河北に遣りて次さしむに會し、丕は將軍の桑據を遣りて之を距ましめんとせるも、王師に敗せる所と為る。襲らは進みて黎陽を攻め、之を克す。丕は懼れ、乃ち從弟の就と參軍の焦逵を遣りて救を謝玄に請わしむ。


(晋書114-6_衰亡)




苻丕が悲惨すぎて泣ける……。


そしてこういうところで地味にいらっとくる動きを見せる翟遼さん。ほんにめんどくさそうで素敵です☆

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