第6話 前にもどこかで──

「前にもどこかで言ったがね、時間というものには、じつはたいして意味はないんだよ。時計であらわされる時間なんてのは、所詮誰かが決めた目印のようなものでね、ほら実際、世界には時差というものがあるじゃないか。生きてきた時間が勝手に修正される瞬間さ。おなじように、こうして時計の針をもどしてやれば──さあ、いまはどうだい、まだ七時だ。『きみの時計とズレている』という事実しかここにはない。いまが何時かなんて、本当のところは誰にもわからないのさ」


「さっさと行かないとおくれますよ、カズトヨさん。今日のあつまりは行かなきゃならないと言っていたじゃないですか」


「行きたくないんだよ、ミツヤくん。──ねえ、きみも行こうじゃないか」


「わたしは招待されていませんからね」

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