【俺(男魔王)と勇者(女)の関係がおかしい<勇者パーティから捨てられた俺、何故か魔王になって勇者に狙われる存在になったが、何故か勇者に好きって言われた>】

島風

第1話 俺氏勇者に殺されそうになる

俺の顔は引きつっていた。無理もない事を理解して欲しい


 俺の足元には何もない、断崖絶壁から勇者に喉首を掴まれ、正に落とされ様としていた


 勇者は整った顔、美しい長い髪、宝石の様な瞳


 だが、その瞳は氷の様に冷たく、俺は虫か何かの様に写っている様だった


「ごめんね」


彼女はそう言った


 そして、俺は落ちていった。奈落の底へ......


 髪が風で激しく舞う、頬を打つ風は痛い程


 俺、死ぬんだ......


 勇者の事、好きだったのに......


☆☆☆


俺は目が覚めた


「生きてる?」


生きていた。何故?


 俺は周りを見渡した


「どうなってるんだこれ?」


不思議だった。俺を液体が包んでいた。しかし、喋れるし、呼吸もできる


「窒息はしないんだ......」


俺は泳いでみた


 泳げた......


「ぷはー」


俺は液体の塊の表面に出た


「地面がある」


俺は地面に向かって泳いだ。幸い、それ程の距離ではなかった


 液体から地面へあがる


「ここに落ちたから助かったのか......」


俺は上を見た、果てしない闇。一体どれだけ落ちたのか


「助かっても、いつまで生きていられるか」


俺は勇者に食糧や水を奪われていた


いや、水や食糧を節約する為に俺はこの奈落の底に落とされたのだ


☆☆☆


俺はしがない『ウォーリア』だった。レアリティの低い戦士職だ


 この世界では14才の成人式でもらう『ジョブ』で全てが決まる


 ここで言うジョブは仕事としての職業では無い、神からもらう特別な才能


 それが『ジョブ』。『ジョブ』は罪深い


 例え、10年の修行をしてもこのジョブの適性能力の1日には勝てない


 努力という物は全くの無意味なものなのだ


 俺はまだいい方かもしれない。ジョブはあらゆる方面の物があり、


 自分の生きたい道と全く関係無い場合がほとんどだ


 商人になりたくても、『商人』のジョブを持たないものはほぼ破産する


 世界中の商人がジョブ『商人』を持っているのだ。勝負にならない


 俺は『ウォーリア』のジョブをもらえた。だから、王国の戦士として雇われた


 王国の戦士は田舎出身の俺にとってはとんでもなく高待遇だった


 両親への仕送りをしながら、まずますの暮らしができた


☆☆☆


俺の様なレアリティが低い『ウォーリア』が何故『勇者』と行動を共にしていたのか?


 不思議だろう?


 理由は簡単だ。俺が『収納魔法』を使えたからだ


 俺はラッキーだった。普通、戦士職のレベルアップ時に魔法のスキルはつかない


 だが、俺はとてつもない幸運により、『収納魔法』を得たのだ


 『スキル』、ジョブにはレベルというものがある


 これはステータスという魔法で確認できる


 一定の経験を積むとレベルアップする。そして、レベルアップする時


 『スキル』がもらえる事が多い


 俺の様な低レアリティの『ジョブ』ではあまり頻繁にはもらえない


 だが、俺はとんでもなく高レアリティのスキル『収納魔法』を得たのだ


 当然、俺の待遇は良くなった。何故って?


 俺一人で馬車10台分の物資が運べる


 それに俺は『ウォーリア』だ。自分を守る術もある


 国王軍で俺は更に高待遇となった


 そして、俺は勇者パーティの一員となった


 彼女らの指導員兼物資運搬係として


 国王から任命された


 勇者との帯同、国王軍の戦士としてこれ以上の名誉はなかった

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