バアル4
『いいか、これからお前にアタシの力を明け渡す。なぁに、アホなお前が小難しいことを考えることはない。ただ、アタシの言うとおりに動くだけでいい』
アンドロマリウスが言った。
「……一言余計な気もするけど。いいわ、あなたの命令を聞くわよ」
ウロコが答えた。
『ふん、それでいい。ではまず、右手のひらから小さな炎を出せ』
「……ごめん。ではまずの「まず」が無理なのだけど。私、人間なのよ」
『そんなことは百も承知だ。だが今のお前なら可能なことだ。炎を出そうと思えば、炎は出る』
「ホント? ……えい! ……あっ、出た」
『それでいい。次にそいつを食え』
「……また無理難題を。食おうと思えば食えるとでも?」
『ああ』
「んー、しょうがない! いただきます! ……ん!?」
次の瞬間、ウロコの体は真っ赤な炎に包まれた。
『……よくやった……成功だ!』
アンドロマリウスが言った。
そして、真っ赤な炎が消えた先には変わり果てたウロコの姿があった。
「……これが……アンドロマリウスの……力?」
ウロコは自身の体を触りながら呟いた。
彼女の皮膚にはトカゲのようなウロコが浮かび上がっており、頭には二本の鋭い角が、腰からは身の丈程の尾が伸びていた。
『そうだ。それがアタシの力……いや、この世界におけるお前のチカラ……竜女だ』
「竜女……」
『どうした? 変わり果てた自身の姿にショックでも受けたか?』
「……ははっ、まさか! めちゃくちゃイケてるし気に入ったわ! それに何より……」
ウロコは目の前のクモの悪魔に向かい合った。
「これなら、村の人々の為に……このドラゴンの為に戦えそうね!」
ウロコは笑みを浮かべた。
『……ふん。勢い余って死ぬんじゃねぇぞ』
「それは……お互い様でしょ!」
ウロコはクモの悪魔に向かって、大地を蹴って跳躍した。
「……って、跳びすぎでしょぉ!」
クモの悪魔の真上を飛び越えたウロコが叫んだ。
『当たりまえだ、竜女の脚力をなめるな。最初は高すぎるスペックに戸惑うだろうが、次第に慣れる』
「高すぎるスペックね。それ、自慢?」
『どう受け取ろうが構わないさ。こいつを大人しくさせられるなら、な』
「だったら、使える武器のひとつやふたつご教示願いたいけどね!」
ウロコは着地した。
『さっきも言っただろ。キーワードは思い込むことだ』
「思い込む?」
『今のお前は、竜の力を手にした竜女だ。ドラゴンが可能なことの全ては、今のお前に可能なこととなっている』
「ドラゴンの武器……爪とかかな?」
すると次の瞬間、ウロコの左手の爪が堅牢な竜の爪へと変化した。
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