091
すずはお気に入りの長靴で病室までしっかり歩いて行った。
「お姉ちゃん、すずが。」
カーテンをそっと開けると、待ちきれないといったばかりのすずが飛び出す。
「ママ!すずきたー!」
「えー?」
姉は驚きつつも嬉しそうに目を細めた。
「すずね、ながぐちゅだよ。ほら、みて。」
「ながぐちゅ?」
「ながぐちゅだよ。ねえねにかってくれた。」
「ああ、長靴ね。すごく可愛い。買ってもらったの?よかったねぇ。」
すずはドヤ顔で長靴を自慢すると、ベッドへよじ登ろうとする。慌てて止めようとしたが、姉はおいでと手を伸ばした。
ベッドの上に座ったすずは満足そうに笑い、今にも飛び跳ねそうでハラハラする。
「ママいたいいたいなの?とんでけする?」
「とんでけ?」
「いたーのいたーの、とんでけー!」
「すごい、飛んでった。」
「あはは!」
「すず、たくさんおしゃべりできるようになったね。すごいね。」
「すごいでしょー。」
二人のやり取りは数ヵ月のブランクを感じさせない。
楽しそうに笑うすず。
楽しそうに笑う姉。
その光景を見るだけで、私は胸が熱くなった。
ふと腕を引っ張られ柴原さんが耳元で小さく言う。
「しばらく二人だけにしてあげよう。」
私は頷き、柴原さんに連れられて一旦病室を出た。
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